【現場から、】台風19号災害

2019年11月29日【長野発】
バス100台守った“過去の経験”

北陸新幹線も水没した長野県千曲川の堤防決壊。近くにあるバス会社では、「過去の経験」をもとにおよそ100台のバスを水が迫る中で移動し、被害を免れました。

長野市の長電バス。先月13日、千曲川の堤防の決壊場所から2キロほど離れた会社に水が押し寄せました。水が引き始めた夕方になっても、バス会社の車庫や周辺の畑には水が残っていました。

「入口の所になりますが、ひざより上ぐらいまで来てたかなと思います」(長電バス 原澤一美所長)

千曲川の堤防が決壊したあの日。午前6時半ごろには会社の北側に水が迫りました。

「敷地内に水が押し寄せる中、会社はバス100台を安全な場所に避難させることを決めました」(記者)

車庫には100台のバスが止まった状態。営業所長の原澤さんは緊急避難を指示します。

「バスはまず一番の優先で移動を考えました」(長電バス 原澤一美所長)

この選択には過去の苦い経験がありました。1980年代、千曲川の堤防が決壊した飯山市で、バス会社の車庫が水につかり多くの車両が水没しました。この教訓から会社では高いところにある広い駐車場をあらかじめ把握。隣の須坂市の公園や駅の駐車場、さらに北陸信越運輸局の長野運輸支局に許可を得て移動させることにしました。

もう一つの問題は運転手の確保。しかし、当初集まったのは十数人。100台を移動させるためには足りませんが、多くの人を乗せるバスならではの方法で移動を試みました。まず、15台ほどのバスが一斉に避難場所へと移動。そのまま全員が1台のバスに乗り込み、会社へ戻ります。後から来た運転手も加わり水が迫る中、この移動を数回繰り返しました。

「20台30台で連なっていくことなんて、(普段は)まずないですから、その辺が複雑でした。一度行って戻ってきたときに駐車場の水がだんだん増えてくるので、どこまで増えてくるのかなという、かなり不安はあった」(バスを移動 荒井善則さん)

およそ2~3時間で移動を終え、100台すべてが無事でした。

「(バス会社の車庫の)9割は水に浸かった。建物まではいかなかったが、危なかったところです」(長電バス 原澤一美所長)

水没を免れたことで2日後には通常の運行を再開。被害を受けた列車の代わりとして、また、ボランティアを被災地へと運ぶ役割も担いました。