【現場から、】台風19号災害

2019年11月26日【東京発】
隅田川氾濫の危機 下町守った対策

東京の下町を流れる隅田川。実は台風の大雨で氾濫の危険がありました。流域の数百万人の暮らしは、どのようにして守られたのでしょう。

東京を代表する川、隅田川。都心の住宅密集地を貫いていることから、ひとたび氾濫すれば大きな被害が出る可能性があります。実は、台風19号で氾濫する危険があったことが分かりました。隅田川は東京・北区で荒川から分岐し、下町を下っていきます。その荒川の水位がぐんぐん上がっていったのです。

これは、固定カメラに映る荒川の映像。先月12日から水位が上がり始め、避難判断水位を突破、13日午前9時50分、戦後3番目となる7.17メートルまで上昇しました。その荒川の水が流れ込む隅田川の堤防の高さは6.9メートルしかありません。このときの荒川の水位7.17メートルより低く、これでは水があふれ出てしまいます。ところが氾濫の危機は回避されました。なぜなのでしょうか。

荒川から隅田川に流れる水の量をコントロールする岩淵水門。先月12日、関東地方整備局荒川下流河川事務所では災害対策室で河川カメラの映像を監視。荒川の水位が4メートルに達した場合、岩淵水門を閉めるという規則にのっとり、12日夜、水門を閉めます。すると、荒川から隅田川に水が流れなくなり、隅田川の氾濫が防がれたのです。

「(Q. 仮に水門が閉められなかったら)堤防越えて、住宅側の方に水が氾濫していた可能性が非常に高いのではないかと」(国交省・荒川下流河川事務所 檜森裕司副所長)

江戸、明治の頃、隅田川は氾濫を繰り返し、下町は度重なる大きな被害に見舞われてきました。実は、今の荒川は、その隅田川の洪水を防ぐための「放水路」として人工的に掘られた川です。明治の終わりから、およそ20年をかけての大工事。その際につくられた水門は後に建て替えられ、現場での操作だけでなく、安全な災害対策室からも遠隔操作で開け閉めができるようになりました。

「非常に重要な施設なので、二重三重の操作方法を持っていないと、ここ(水門)が閉まらないと非常に大変なことになりますので」(檜森裕司副所長)

100年前から培われた水害対策が功を奏したのです。

一方、平成になってからできた施設も荒川の氾濫回避に一役買いました。埼玉県内の荒川沿いおよそ8キロにわたる「荒川第一調節池」が今回、増水した荒川本流の水を貯えたのです。この調節池に荒川の水が流れ込んだのは、12年ぶりのことでした。記録的な大雨となった台風19号。新旧の様々な洪水対策が機能し、荒川下流に住む数百万人の生活が守られたのです。

- 取材後記 -
「隅田川氾濫の危機 下町守った対策」
TBS社会部 福田浩子 記者

旧岩淵水門が完成したのは1924年。その後、地盤沈下などの影響で建て替えられ、1982年に新岩淵水門が完成して以来、今回の水門閉鎖は12年ぶり5回目のことでした。

今回の水門閉鎖は「荒川の水位が4メートルに達したら水門を閉める」というルールにのっとった、一見するとシンプルなことでした。

しかし、取材をしてみると、安全な場所から遠隔操作で閉められるだけでなく、停電や通信トラブルが起きたときにも対応できるよう、現場でのボタン操作で開閉できたり、水門が自重で降下できるようになっていたりと、様々な状況を想定し、施設が整備されていることがわかりました。

報道する側である私たちを含め、災害が起きた後は被害の大きかった場所に目がいきがちですが、被害が出ずにすんだ地域ではどのような対策が功を奏したのかを知り、別の場所でそれを生かすことも大切だと感じました。