【現場から、】台風19号災害

2019年11月18日【宮城発】
震災に続き浸水も…再起への決意

今回は、東日本大震災で家族を失い、今回の台風でも被害を受けた宮城県の農家の男性です。2度の災害に見舞われながらも、仲間たちと再起を目指しています。

宮城県大郷町で農業生産法人を経営する阿部聡さん(40)。台風19号で近くの川が氾濫、ハウスは1.5メートルの高さまで浸水しました。

「トマトがここまで水をかぶっているんですよ。ようやく収穫量が上がってきてこれからって時だったんですよ」(イグナルファーム大郷 社長 阿部聡さん)

収穫間際だったミニトマトは全滅。長ネギの畑も濁流に浸かりました。復旧にはおよそ1億円かかるといいます。

「津波の被害も受けていたので、なんで水害にこんなに遭うのかなと。よっぽど運が悪いのか、日頃の行いが悪いのか」(イグナルファーム大郷 社長 阿部聡さん)

阿部さんを襲ったもうひとつの災害。2011年の東日本大震災です。震災前、宮城県東松島市で専業農家をしていた阿部さん。津波で、妻と3人の子ども、そして祖母の5人を亡くしました。当時住んでいた自宅とハウスも被災しました。

「白い倉庫が建っているんですけど、ここ元々、家があったんですよ。そこが元々、母屋。本当にもう何もないですし、自分の生きている価値も見出すこともできないので。毎日、頭には『死』」(イグナルファーム大郷 社長 阿部聡さん)

失意のどん底にいた阿部さんに立ち直るきっかけを与えてくれたのは、仲間の農家の言葉でした。

「『聡くん、何もなくなっちゃったけど、仕事なら取り戻せるんじゃないの』という話で。確かにそうかなと」(イグナルファーム大郷 社長 阿部聡さん)

震災が起きたその年に、仲間たちと農業生産法人「イグナルファーム」を設立。「イグナル」は、東北弁で「良くなる」。震災を乗り越え、全てが良くなるようにと願いを込めました。

去年、規模の拡大を目指して大郷町に進出。過去の水害についても調べ、安全だと信じていました。

「施設建てる前に町の文献を調べて、水害の記録が一切なかったんですよ。まさか、あんな台風が来るとは思っていなかったですね」(イグナルファーム大郷 社長 阿部聡さん)

東日本大震災から8年8か月となった今月11日、家族の墓を訪れました。

「『あんたならやれるんじゃないの?』って言ってくれると思うんですよ。厳しい奥さんだったんで。水害だけで自分たちの気持ちが折られてたまるかと、そういう気持ちで、今回もまた必ず復活させようかなと思ってます」(イグナルファーム大郷 社長 阿部聡さん)

震災と台風19号。2度の災害に見舞われながらも、仲間とともに復興を誓います。

- 取材後記 -
「震災に続き浸水も…再起への決意」
東北放送 浜口実咲 記者

「体さえ動いて心さえ折れなければ、必ず復興はできる」

取材当初から阿部さんが言っている言葉です。家族と仕事を失った東日本大震災から立ち直った阿部さんだからこそ、出てくる言葉だと感じます。

放送後も取材を続けていますが、阿部さんは2020年の3月に向けて、ミニトマトの栽培を再開したいと意気込んでいます。個人農家だった震災前とは異なり、今回は農業生産法人の代表。修繕費や雇用の問題など、一つひとつ慎重に行動していて、代表としての責任をとても感じます。

台風から1か月後には、被害が少なかった長ネギの出荷が再開し、その半月後にはミニトマトのハウスの修繕作業が始まりました。宮城や町の農業を支える農家として、どのようにこれから歩みを進めていくのか注目していきたいです。