【現場から、】台風19号災害

2019年11月11日【埼玉発】
避難の車で10キロ超の大渋滞

埼玉県加須市では、未明の時間帯に避難する人たちの車が殺到。10キロを超える大渋滞となり、避難に3時間もかかる事態が起きていました。なぜ、こんなことになったのでしょうか?

赤いブレーキランプをつけて、ノロノロと進む車の列。これは、先月13日の午前2時40分ごろに撮影された映像です。避難場所に向かう車が殺到して、川を渡る橋で渋滞が起きてしまったのです。

「1時間くらいいた感じ」(当時避難した人)

「利根川が氾濫したらみんな死んでた」(当時避難した人)

どうしてこんなことになったのでしょうか?

利根川と渡良瀬川の合流点にある、埼玉県加須市「北川辺地区」。5メートル以上の浸水が予想されている水害の危険度が高い地域ですが、およそ1万1000人が住んでいます。

市は今年5月にハザードマップを改定。北川辺地区は利根川にかかる埼玉大橋を渡って、10キロ以上も離れた避難場所に向かうことなどを住民に周知したばかりでした。

「安全な遠いところへ逃げていただく。加須市としては広域避難を実施している」(加須市環境安全部・江原和弘部長)

今回の台風19号。川の水位が上昇する危険があるとして、市は12日午後11時、「翌朝4時に避難勧告か避難指示を出す可能性がある」と発表しました。ところが、利根川の水位が予想を超える速さで上昇。市は13日午前1時に急きょ、避難指示を出しました。

未明の時間帯に、いきなり出された避難指示。加須市では、初めての広域避難が一斉に始まったのです。

「夜中の1時2時に避難指示が突然出たんだから」(当時避難した人)

「老人とか弱者を先にという話があるけど、全員一斉に避難指示が出た。だから段階的じゃなくて」(当時避難した人)

幼い4人の子どもを連れていた女性も、渋滞で埼玉大橋をなかなか渡れなかったといいます。

「全部の道が真っ赤っか。歩こうかなって思うくらい怖かったです。今、決壊したら絶対に埋まるなっていう、水没するしかないんだなっていうのがありました。ほんとに命の危険を感じた」(子どもを連れて避難した女性)

車の列は埼玉大橋から避難場所まで10キロ以上にわたって連なり、3時間近くもかかって着いたという人もいたといいます。

さらに、北川辺地区から埼玉大橋とは反対側の栃木県方向に避難した人たちもいましたが、ここでも途中で渋滞が発生していました。

「徒歩、絶対無理じゃないですか、こんな地域。絶対車で移動しないと行けない状況だから、もっとやり方はなかったのかなと思いました」(子どもを連れて避難した女性)

今回、北川辺地区が浸水することはなかったものの、利根川は一時、氾濫危険水位を超えました。今後、広域避難をスムーズに行うにはどうすればいいのか?

「課題を一つ一つ検証して、次に生かしていければ」(加須市環境安全部・江原和弘部長)

市は、段階的な避難を行えるよう、避難勧告などをもっと早く出すことを検討していきたいとしています。

- 取材後記 -
「避難の車で10キロ超の大渋滞」
TBS社会部 秋田悠然 記者

一部報道では当初、北川辺地区は広域避難が成功した地区として紹介されていました。

ですが、実際に現地で取材してみると、私が出会った北川辺地区の多くの住民は今回の避難における市の対応に不満を持っていました。さらに、住民だけでなく市の担当者までもが、「防災計画は事前に策定していたが、今回の避難を単純な成功例として紹介するのはやめて欲しい」と今回の対応を反省していて、さらには「むしろTBSには厳しい目で見てもらいたい」とまで言ったのには驚きました。

北川辺地区は特に水害の危険度が高い地域なのもあり、私が取材した住民や市の担当者の防災への意識は高いものでした。

今回の反省からどのように防災計画を改定していくのか注目したいです。