【現場から、】台風19号災害

2019年11月6日
異例の77時間前、緊急会見の理由

台風19号の襲来に備えて、気象庁は先月、かつてない早いタイミングで緊急記者会見を行いました。そこからは、災害の発生を見越して、記者会見の方向性を大きく転換しようとしている気象庁の狙いが見えてきます。

10月9日午後2時、いつも以上に緊張感漂う気象庁の緊急記者会見を、私たちはこう伝えました。

「気象庁は、異例の早さで緊急会見を開き、『命を守る早めの対策』を呼びかけました」(NEWS23・10月9日放送)

この記者会見が行われたのは、結果的に、台風の上陸に先立つことおよそ77時間前。気象庁は2011年度以降、24個の台風に対して緊急会見を実施しましたが、上陸時刻から逆算して77時間、すなわち丸3日以上も前の開催はこれが初めてでした。異例の早い会見が実現した理由は2つ。1つは、台風19号が大型で、しかも非常に強い勢力で日本に接近・上陸するとの予測精度に、気象庁が早い段階で確信を持っていたことです。

「大型の台風だったので、どこかに何らかの影響がある確度が高かった」(気象庁・黒良龍太主任予報官)

もう1つは、3日後に迫っていた3連休の存在です。

「さまざまなイベントの開催や交通機関への影響に懸念がある」(気象庁)

3連休の前日や前々日の記者会見では、対応が後手に回るおそれがある。そんな危機感が、具体的かつ踏み込んだ次の発言につながりました。

「11日金曜日までに暴風などに備えるようお願いします」

「12日の朝には暴風が吹いたり、大雨の影響を受ける地域が出るおそれがあり、事前の対策はそのタイミングではもう難しくなるだろうと(考えた)」(黒良龍太主任予報官)

3連休前日の11日までの3日間に備えられるかどうかが鍵を握る。気象庁が時間に猶予を持たせて発信したメッセージは、JRはじめ公共交通機関を相次いで計画運休の実施に踏み切らせたほか、ラグビーワールドカップの主催者にもかつてない重大な決断を迫る結果となりました。

「昭和33年の狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となるおそれもある」(気象庁・梶原靖司予報課長)

さらに気象庁は、11日に行った2回目の緊急会見で、およそ60年前、1200人以上の死者・行方不明者を出すなど、関東地方や伊豆地方に大きな被害をもたらした「狩野川台風」を引き合いに出しました。台風19号の上陸までおよそ32時間というタイミングで、あえて用いたキーワードでした。

「通常『記録的な大雨となるおそれ』などの表現で記者会見を行うが、今回の台風19号については、気象庁の危機感が通常のキーワードだけでは十分伝わらないおそれがあると危惧した」(黒良龍太主任予報官)

一方、「狩野川台風で、東北地方や長野などの被害までもイメージすることは困難」との指摘もあり、気象庁は今後、発信した情報がどう受け止められたか検証を行う方針です。

「気象庁としては、最大級の警戒が必要な状況を、記者たち、そして、直接住民に伝える最高の手段として記者会見をとらえている」(黒良龍太主任予報官)

上陸77時間前と32時間前の警告は、命を守るために生かされたのか。気象庁の摸索が続きます。