【現場から、】台風19号災害

2019年11月3日【宮城発】
相次いだ「ため池」決壊、対策に課題

宮城県では川だけでなくため池も決壊し、住宅などが浸水する被害が出ました。西日本豪雨でも相次いだため池の決壊。対策の難しさが浮き彫りとなりました。

台風19号で24時間に357ミリもの雨が降った宮城県白石市。落合地区では山から濁流が押し寄せ、およそ20戸の住宅が浸水しました。

「今回はここまで(水が)来ました。普通の台風は徐々に上がりますけど、一気に津波のように来ました」(住民)

濁流が押し寄せた理由、それは上流にある「逆川上ため池」など、3か所の農業用ため池が相次いで決壊したからでした。

「上流にある逆川上ため池が最初に決壊したと思われまして、下の(住宅に)影響が及んだと考えています」(白石市建設部・藤原裕部長)

ため池決壊による被害は、去年7月の西日本豪雨でも相次ぎました。このため国は、住宅に近く、優先的に補強や避難の対策を進めることが必要な「防災重点ため池」の選定対象を拡大。宮城県内では、今回決壊した3か所を含む617か所が選定されていました。

去年8月には県と白石市が逆川上ため池について浸水想定区域を示したハザードマップを作りましたが、あくまで地震による決壊を想定したもので、豪雨での決壊は想定していませんでした。

今回、落合地区では一帯が想定の倍近い高さまで浸水したほか、想定区域の外にも水が押し寄せました。

ため池から直線距離で4キロほど離れた位置にある福祉施設です。ハザードマップの想定区域には入っていませんが、浸水被害に遭いました。

「この辺くらいまで(水が)来てました。“ハザードマップ以外の場所”も浸水がみられたので、(ハザードマップの)見直しをしてほしい」(社会福祉法人「白石陽光園」菊地章支援課長)

白石市では「マップの見直しを検討したい」と話していますが、その一方、宮城県の担当課は「新たなハザードマップ作成には国の研究機関で専門のシステムを作る必要があり、全てのため池で作り直すことは現実的に難しい」と話します。

「ハザードマップには限界がある。地域の人たちが(限界があることを)理解してハザードマップを地域防災に役立たせてほしい」(宮城県農村整備課・大内孝喜課長補佐)

宮城県では「全てのため池を補強することも財政的には厳しい」と話していて、改めて対策の難しさが浮き彫りとなっています。

- 取材後記 -
「相次いだ『ため池』決壊、対策に課題」
東北放送 浜口実咲 記者

台風直後からこの地区を取材していましたが、市や住民が口をそろえて「想定外の豪雨だった」と話します。

当初は市が被害状況を十分に把握できていませんでした。そのため、私はため池のハザードマップを手に取り、どの住宅まで濁流が押し寄せたのか、一軒一軒を回って確認していきました。

今回決壊した「逆川上ため池」は大正時代にできたといわれ、市によると、およそ30年間大規模な補修作業は行われていなかったといいます。

ハザードマップが国民から信頼されているようになった今だからこそ、「想定外の豪雨」だけで終わらせず、今回の決壊の原因や濁流が押し寄せた経路などを細かく精査し、国全体で考えていくべき課題だと感じます。