【現場から、】台風19号災害

2019年10月30日【長野発】
「垂直避難」できず、住民が明かす恐怖

千曲川が決壊した長野市では、当時、胸まで水に浸かりながら避難した住民が多くいます。取材を進めると、2階への「垂直避難」ができず、ぎりぎりの選択を迫られていたことが分かってきました。

「避難している人がいる」(記者)

13日の未明、長野市の千曲川の堤防が決壊する前、現場近くを歩いて避難する親子がいました。

「最初水たまりくらいだったのに、一気にきた」(避難してきた人)

「大きい川みたいになって」(避難してきた人)

車を乗り捨ててきたという親子。この時、少なくとも川の水が堤防を越えていたとみられます。

「お年寄りの夫婦が取り残されている」(避難してきた人)

すぐに記者が通報。およそ3分後に警察が駆けつけますが…。

「いなさそうだな…」(カメラマン)

そんな中。

「発見です!発見!2人発見!」(警察官)

胸まで水に浸かった夫婦が助け出されました。

「リンゴの木のこの辺がすごく流れが強くて、流されそうになった」(藤木康夫さん)

藤木康夫さん(66)と妻のベルさん。当時乗っていた車も、現場に残されていました。

藤木さんの自宅は、堤防が決壊した現場から1キロほどのところ。午前3時前、2人は車で自宅を出ました。しかし、途中でエンジンが停止。国道までは、まだ200メートルもありました。暗闇の中、リンゴの木をつかむなどして、少し高いところにある国道を目指しました。

「『早く行け行け』と言って、夫が『私はどうでもいいから早く行け、自分(ベルさん)だけ助かればいい、早く行け』と言って」(ベルさん)

歩き始めておよそ5分、警察官の姿を見た藤木さんが大声で助けを求めました。

「ああ生きていた…。そこ(道路)は水がなかったんですよ。ああよかった、神様生きてた…と」(ベルさん)

藤木さんの自宅は「平屋」。天井の近くまで泥水に浸かっていました。

「1階の場合は水没してしまうと、脚立とかがない限り上へ上がることができない。逃げるには今しかないと判断したから、ここまでこられた」(藤木康夫さん)

藤木さんたちの少し前に逃げてきた親子の自宅も「平屋」でした。

「まさか決壊するとは夢にも思っていなかった」(避難した住民)

一方、同じ赤沼地区では2人が犠牲に。改めて早めに避難することの難しさが浮き彫りとなりました。