【現場から、】台風19号災害

2019年10月29日【福島発】
避難所運営の市職員が犠牲、遺族の思い

台風19号が襲った福島県では、避難所の運営にあたっていた市の職員が、川の氾濫に巻き込まれて亡くなりました。遺族が複雑な胸の内を明かしました。

南相馬市の職員だった大内涼平さん(25)。避難所運営からの帰り道で犠牲になりました。

「市民のために働くのもそうだけど、本来ならもっと自分の命が大切だ」(涼平さんの父 大内敏正さん)

今月12日、台風19号による記録的な大雨で、気象庁は福島県に大雨特別警報を発表。南相馬市でも命を守る行動が呼びかけられていた最中の出来事でした。

13日の午前0時半、大内さんは朝からの避難所対応に備えるため、通い慣れた、この川沿いの道を通って職場から帰宅することになりました。しかし、冠水した道路に車が浸かり、およそ5時間後、現場付近で遺体で見つかりました。死因は溺死でした。

「水におぼれたわけですから、本人はだいぶ、もがいただろうし、苦しかったんだろうなというのを考えるとつらい」(涼平さんの父・大内敏正さん)

19日に営まれた葬儀には、遺族や友人、同僚など、およそ150人が参列し、25歳の若さで亡くなった大内さんを悼みました。

南相馬市の門馬市長は、弔辞の中で謝罪の意を示しました。

「(市は)市民の生命と財産を守る、ひとりの犠牲者も出さない。しかし大切な職員の命を守ることができませんでした。任命権者として誠に申し訳なく、お詫びの言葉もありません」(南相馬市・門馬和夫市長)

しかし、遺族の無念が晴れることはありませんでした。

「あの日、あの時間に、なぜ息子涼平が帰らなければならなかったのでしょうか。今さら何を言っても息子は帰ってきません」(大内敏正さん)

大内さんが市の職員を目指したのは、地元、南相馬の震災復興に携わるためでした。自然災害の脅威を知る大内さんが、台風による冠水被害で前途を奪われてしまったのです。

「亡くなった命は帰ってこないから。こんなことが二度と起きないように、涼平の死が役に立ってほしい」(大内敏正さん)

大規模災害から、自らの命、そして周りの人たちの命を守るためにできる最善の行動は何なのか。大内さんの死が問いかけています。