【現場から、】台風19号災害

2019年10月21日【長野発】
水没の高齢者施設、犠牲者ゼロの理由

千曲川が決壊した長野市では高齢者およそ300人が暮らす施設に濁流が押し寄せ、1階が完全に水没しましたが、犠牲者は出ませんでした。その背景には、過去の災害を教訓とした防災意識の高さがありました。

千曲川の堤防が決壊した今月13日。決壊現場からおよそ3キロ離れた長野市内の高齢者介護施設「豊野清風園」にも濁流が押し寄せ、施設の1階が水没しました。

当時、施設には278人の高齢者がいましたが、全員が無事でした。なぜ人的被害を防げたのか。高齢者の命を救ったのは「防災ルール」の徹底でした。

「千曲川が氾濫すると水が全部、浅川に入ってくるので、明るいうちに、とにかく避難をしないと夜になると身動きがとれない」(「豊野清風園」森佐知子施設長)

豊野清風園は過去にも水害に襲われた地域にあり、警戒レベルに応じて、入所者を移動すると細かく決めていました。「避難準備情報」が出ると、全ての入所者を2階より上に避難させるという計画です。今回は「避難準備情報」が出る前に「避難勧告」が出たため、台風が近づいた12日午後6時には全員を2階へ移しました。堤防が決壊し、駐車場に濁流が押し寄せた13日の午前7時ごろには、278人の入所者全員を3階より上に避難させました。

「背負ったり、車いすを4人で運んだり、本当に必死で、とにかく水が来る前に、まさか1階の天井まで(水が)来るとは思わなかった」(森佐知子施設長)

豊野清風園が避難計画をつくったきっかけは東北で起きた台風による災害です。3年前、台風の大雨で岩手県の川が氾濫、近くの高齢者施設に濁流が押し寄せ、入所者9人が犠牲となりました。この災害を教訓に、豊野清風園は細かい避難のルールを設定した上で、入所者と一緒に、毎年、避難訓練を続けてきたのです。

「訓練の成果なのか、やってなかったらパニックになっていた。私は、まず今回は全員が安全に避難できたことにホッとしている」(森佐知子施設長)

入所者全員を別の施設に無事送り出すことができた豊野清風園。災害は自分の身にも降りかかるという危機感が多くの人の命を守りました。