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TBS NEWS

2021年11月25日

今週の注目「新生銀行が買収防衛策を取り下げ、SBI傘下へ」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

何ともあっけない幕切れでした。
インターネット金融大手のSBIホールディングスからのTOB・株式公開買い付けに対抗するため、買収防衛策の導入を進めてきた新生銀行が、防衛策を諮る予定だった臨時株主総会の前日になって、買収防衛策を取り下げ、株主総会も中止しました。新生銀行のおよそ2割の株式を保有する国が買収防衛策に反対する方向となり、防衛策の可決の目処が立たなくなったことが、その最大の理由です。防衛策が通らないなら、対立を深くするより早めにスムーズな経営移譲を行ったほうが良いという金融庁の暗黙の「指導」も影響したとみられます。

今後、SBIは12月8日まで48%取得を目指したTOBを進めて新生銀行を子会社化し、来年2月を目処に新生銀行の現経営陣は退陣、SBIの推す五味元金融庁長官ら新経営陣に交代する運びです。

そもそも国(金融庁)にとっては、買収防衛策の議決そのものが避けたいものでした。国が経営体制の変化に賛否を言うのは元来、はばかられることですし、棄権するのも大株主だけに無責任です。新生銀行は長銀破綻時に注入した公的資金を未だに返済できていないため、株価を上げると明言するSBIに対抗するための買収防衛策に賛成するのは論外ですし、さりとて、これまで公的資金注入行である新生銀行の経営計画を逐一承認してきた金融庁が、その経営計画を全否定して会社提案に反対するのも、ご都合主義に見えてしまいます。

こうした「大人の事情」で議決そのものをやめ、表面的には「敵対的買収の回避」につながったわけですが、他の株主にとっては、買収の是非をはじめ、経営のあり方を総会で意思表示する機会を奪われたと言えるでしょう。現に有力な海外の議決権行使助言会社2社は、新生銀行の買収防衛策に賛成という意見を表明しており、事後的な買収防衛策導入をどう考えるかは、大きな論点でした。

また、新生銀行自身が懸念を表明していたように、SBIが新生銀行株の保有比率を最大48%に留めている点は、少数株主の利益や、新しい経営のガバナンスの観点からも、広く議論が交わされて然るべきでした。そして何よりも、1997年の長銀破綻以来、未だ残った3500億円もの公的資金が、なぜ返済できないのか、その間、国は大株主として何をしていたのか、そしてどのように返済するのか、日の当たる場所でもっと議論されるべきでした。

バブル崩壊の教訓によって「不透明な金融行政からの脱却」をめざし、大蔵省から分離された金融庁ですが、果たして、今回の騒動について「透明」と胸を張れるでしょうか。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(土曜午前11時)」キャスター。