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TBS NEWS

2021年10月29日

今週の注目「テスラ時価総額1兆ドル超え」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

アメリカの電気自動車メーカー・テスラの株価が、25日に1株1000ドルの大台に乗り、時価総額が1兆ドルを超えました。足元ではやや円安が進行して1ドル=114円ですから、日本円にするとテスラの時価総額はなんと114兆円。日本の1年間の国家予算より大きな規模と言うことになります。アメリカ企業で時価総額1兆ドルを超えたのは、アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾンに次いで5番目です。

日本企業で時価総額が一番大きい企業はトヨタ自動車ですが、時価総額は32兆円ほどですので、テスラの時価総額はトヨタの3倍以上になります。時価総額でテスラがトヨタを抜いたのは、わずか1年ほど前の2020年7月のことでした。世界で1000万台を販売するトヨタと数十万台のテスラの価値が同じなんて、「テスラの株価はあまりにバブルだ」と随分ニュースになりましたが、この1年で、その差は更に開いたのです。

この現象を「バブルがさらに膨らんだ」と片づけることは簡単ですが、市場が将来への期待も含めた一つの答えを示しているのだとしたら、「日本になぜテスラは生まれないのか」と自問自答する必要があるかもしれません。

今回、テスラ株が高騰したきっかけは、レンタカー大手のハーツがテスラ車を10万台購入すると発表したことでした。年間50万台程度しか生産していないテスラにとっては大きな商談でハーツの購入総額は47億ドル(4700億円)と伝えられています。これによってハーツのレンタカーの2割以上がEVになるそうです。株式市場が評価しているのは、売り上げという商談の直接的な効果だけではなく、自動車を選ぶ消費者の構造的な変化を嗅ぎ取ったからでしょう。レンタカー大国アメリカでは多くの人が頻繁にレンタカーを使います。レジャー用にレンタカーでテスラに乗った人が増えれば、潜在的な購入希望者は増えるでしょう。また二酸化炭素排出削減が求められる中で、企業が「出張ではレンタカーはEVに」と求めるケースが増えるかもしれません。

また、その後明らかになったところでは、ハーツは10万台のうち最大5万台をウーバーのドライバーに営業車として貸し出すとのことです。マイカーを所有しないウーバーのドライバーがテスラを借り受けて営業するわけです。環境志向の強いカリフォルニアなどでは、EV指定でウーバー(タクシー)を呼ぶお客さんも期待できるかもしれません。つまり、脱炭素を迫られている企業、脱炭素を志向する顧客という構造変化と、テスラのビジネスが相乗効果を生む構図ができつつあると市場は見ているのではないでしょうか。

日本ではエンジン自動車メーカーが強いだけに、こうした動きはなかなか見えません。「ベンチャーの電気自動車メーカーが、日本が得意とする街乗りの小型EVを作って、安くて手軽なカーシェアシステムがあれば良いのに」なんて思いますが、無理でしょうか。

テスラの1兆ドル超えは、改めてアメリカ経済のダイナミズムを感じさせます。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(土曜午前11時)」キャスター。