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TBS NEWS

2021年10月11日

今週の注目「株式市場に岸田ショック!?」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

岸田新政権の誕生でご祝儀相場になるかと思いきや、東京株式市場は下落が続き、ついに菅前首相が退陣表明する前の水準にまで逆戻りしてしまいました。とりわけ自民党総裁選挙の週の始まりである9月27日から、新内閣発足後の10月6日(水)まで、日経平均株価は8日連続で下げ続け、再び2万7000円台に沈没。8日続落は、なんと12年ぶりの出来事でした。

もちろん、今回の株価急落では、中国の不動産会社・中国恒大集団の経営悪化や、原油価格の高騰、アメリカの債務上限問題などグローバル経済への不透明感を背景にした世界的な株価下落があり、一人、岸田新首相のせいにするのはフェアではありません。それでも日本株の下落率は群を抜いており、日本特有の要因も大きく作用しています。

菅首相の退陣表明を中心とする8月下旬からの政局ラリーでは、外国人投資家の大量の買いが相場を急速に押し上げました。逃げ足の速い彼らは日経平均が3万円に到達するや素早く売りに転じました。中でも総裁選で『改革派』と称される河野太郎氏の敗北が確実になると、さっさといなくなってしまったのです。どうやら、安倍・麻生両氏を後ろ盾にする岸田氏は、彼らから見れば『守旧派』という位置づけだったようです。そして、今回の急落が『岸田ショック』とまで言われる所以は、岸田新首相が経済政策について、自ら語った言葉にあります。

その第1が、金融所得課税の強化です。現在、株式譲渡益や配当にはおよそ20%の税金が分離課税で課せられていますが、高所得者にとっては、他の所得に比べれば税率が低いため、年収1億円を超えると、金融所得の割合が多くなる分、逆に実効税率が低下するという問題が指摘されています。岸田首相は、この『1億円の壁』を念頭に、金融所得課税の強化検討を公言、株式市場は身構えることになりました。

第2は、『分配重視』ととられかねない言い方です。解散総選挙が迫っているだけに、分配政策が口をつくことが多くなるのはわからなくもありませんが、本来は、成長しなければ分配の原資はでてきません。ですから、分配という言葉を使えば使うほど、株式市場には、成長への本気度が疑われてしまうのです。

金融所得課税の強化も、分配政策の強化も、具体的な制度設計や財源があっての話です。そうした点を詰めて検討した上で新政権の政策を具体的に語らなければ、市場にも海外にも誤ったメッセージを伝えかねません。一候補者ではなく、日本国の最高責任者になったからには、新政権発足時の意気込みはともかく、政策と言う名に値する中身を慎重に発信する必要がありそうです。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(土曜午前11時)」キャスター。