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TBS NEWS

2021年9月13日

今週の注目「菅退陣で株価3万円回復」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

政局流動化で上げに転じた日経平均株価が上昇ピッチを上げ、7日に5か月ぶりに3万円台を回復しました。2月につけたバブル後最高値である3万467円も射程に入ってきました。今回の上昇は、岸田氏出馬表明、二階幹事長交代、菅首相の総裁選不出馬など、政局の方向感に関わらず上げ続けているのが特徴で、支持率の低下が止まらない菅政権に漂っていた先行き不透明感が一掃され、要は、次の総選挙で自民党が下野することはないと市場が確信したことの表われです。自民党総裁選挙での論争を通じてだれが総裁総理になっても経済対策は打たれるだろうという予感もあります。

その一方で経済正常化に向けた具体的な期待感も株価を後押ししています。感染者数過去最悪の第5波もようやくピークを超える中で、経済正常化に強いこだわりを持っていた菅首相の肝いりで、ワクチン証明などを前提とした経済正常化プログラムの基本的な考え方が打ち出されたことが大きいと思います。

あくまでも、今の重症者数が減って、今の医療ひっ迫が解消されることが前提ですが、ワクチン接種が人口の7割8割に達した際には、感染リスクの低いワクチン接種者や陰性証明者に、飲食や旅行、イベント参加などを認めることで幅広く経済を動かしていこうというものです。コロナとの戦いが長期戦になる以上、こうした「ウイズコロナ」社会をめざすのは当然の姿です。コロナに感染していない人が運営するお店で、感染していない人同士が酒を飲んでも感染はしないわけで、本来はもっと早くから模索すべき道でした。ワクチン接種が遅れたため、ここまで時間がかかってしまいました。

もちろん「感染していない」と断定することは、容易ではありません。従って、ワクチン接種者や陰性証明者という形でリスクの低い人を定義し、万一、ブレークスルーになった人や偽陰性だった人が混じっていたとしても、それは一定のリスクとして許容しようという考え方です。それでも感染者が出た場合には、いち早く見つけ出し、いち早く医療で手当てし、重症化させないという体制を整えることが必要になります。

だとしたら、やらなければいけないことは明白です。まずはひっ迫を起こさないような医療体制にすること。すなわち病床を増やせる体制、医療従事者の方々に幅広く協力を要請できる体制を築くことです。そしてもう一つは、検査をより手軽により頻繁に受けられる体制にして、低リスクといえども、感染した場合には、素早く発見できるようにすることです。

結局のところ、1年半も前にコロナ危機が始まった時に言われていたことと同じことで、それが変わらぬ問題の本質なのです。自民党総裁選では、キャッチフレーズを競うより、この点の具体的対策を詰めて欲しいものです。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。