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TBS NEWS

2021年9月3日

今週の注目「P&G快進撃の秘密」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

P&Gジャパンが好調な業績を維持しています。コロナ禍で洗剤や除菌用品などの売れ行きが伸びているだけでなく、日本市場にダーゲットを絞った長年の商品開発が実を結んでいるからで、過去5年間の売上高成長率は、それ以前の2倍になっています。先月、P&Gジャパンのスタニスラブ・ベセラ社長にインタビューしました。

ベセラ社長は、「日本の消費者は世界で最も目が肥えていて要求が高い」と言います。その一方で「技術革新への反応は極めて速く、価値あるものを見つければ、高い価格でも購入する」と分析します。このためP&Gでは、徹底的に日本の消費者ニーズを調査し、日本の消費者に特化したイノベーションを行って高付加価値商品を投入しています。抗菌作用に留まらず、除菌ができる洗剤アリエールは、その代表例でしょう。

また商品開発にあたっては、これまでの商品カテゴリーにこだわらず、新しいニーズを掘り起こしていくことで、市場そのものを拡大させることに注力していると言います。トイレ用のファブリーズは、トイレの空気の消臭という、従来のトイレ消臭剤の概念から、壁や天井の消臭や防臭、さらには床の抗菌といった機能も加え、いわばトイレ消臭剤のカテゴリーを再設定することで市場全体を拡大させたのです。ベセラ社長は、自社製品のシェア拡大より、カテゴリー全体を成長させることの重要性を繰り返し強調しました。成熟国の消費財市場拡大には欠かせない視点だと感じました。

ところでP&Gは数多くのブランドを日本市場に投入しています。洗剤のアリエールや台所洗剤のジョイ、おむつのパンパース、消臭剤ファブリーズ、シャンプーのパンテインなどはその代表ですが、髭剃りのブラウンやジレット、口腔ケアのオーラルB、化粧品のSK-IIもP&Gの製品です。私には、個々のブランドはよく知っているがP&G製品だとは知らなかったというものが、数多くありました。

この点について、ベセラ社長は、「ブランドは独り立ちできなければならない」「P&Gが作っているから売れるのではなく、そのブランドだから売れるようにならなくてはならない」と言います。「ブランドとは個々の性能をしっかりと消費者に伝えるものであり、『パフォーマンスの約束』こそがブランドだ」と定義しました。従って、「消費者の進化に対応した継続的なイノベーションが必要であり、商品を投入して何年もほったらかしにしていてはダメなのだ」と語りました。

まず、各々の商品ブランドが強くなること、それらの集合体の上に、環境や多様性といった企業メッセージが重なって、トータルの企業ブランドが作られるのだと説明しました。企業イメージの前提に、まず強い商品ブランドがあるべきだという考え方は、説得力がありました。

日本の消費市場は人口減少にデフレという厳しい環境に直面していますが、ベセラ社長の発言には、数々のヒントがありそうです。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。