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TBS NEWS

2021年8月23日

今週の注目「カブール『陥落』の衝撃」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

半年、1年後には起きるとは思ってはいたが、まさかこれほどアッと言う間に、首都カブールがタリバンの手に落ちるとは思わなかった。バイデン大統領も含めて、誰もがそう感じたことでしょう。20年に及ぶアフガン戦争はあっけなく終焉を迎え、タリバンがアフガニスタン全土を制圧しました。まさに『元の木阿弥』です。

カブールのアメリカ大使館からヘリコプターで国外脱出をはかるアメリカ人の姿を捉えた映像は、1977年4月のベトナム・サイゴン陥落の際の映像とそっくり重なります。ブリンケン国務長官が「カブールはサイゴンとは違う」と反論すればするほど、今回の『撤退』劇に敗北感が漂います。

それもそのはず、アフガン戦争はアメリカがベトナム戦争に直接介入した年月よりも長い20年に及び、この間、戦死したアメリカ兵は2400人、戦費など費やした国家予算は250兆円にものぼります。にもかかわらず、アメリカが当初意気込んだ「民主国家」の成立が達成できなかったばかりか、イスラム法がすべてに優先すると公言するタリバン政権の復活という結末となりました。バイデン大統領は、同時多発テロのようにアメリカがテロリストの直接攻撃を受けることはなくなったと説明しますが、アフガニスタンに「力の空白」が生まれた以上、今後ずっと保証されるものではありません。

91年にソビエト連邦が崩壊して『冷戦』に勝利したアメリカは、『唯一の超大国』と呼ばれ、グローバル資本主義を推し進め、マクロ経済的には繁栄を謳歌しました。この四半世紀余りを『ポスト冷戦時代』と規定すれば、その『ポスト冷戦時代』が『カブール陥落』をもって名実ともに終焉を迎えたと言えるのではないでしょうか。唯一の超大国と言ってもパックス・アメリカーナの時代とは異なり、アメリカの相対的な国力低下は否めず、すでに2001年の同時多発テロの時から、『文明の衝突』や『格差拡大』と言う言葉で表されるように、そのほころびは指摘されてきました。また、格差拡大はアメリカ国内でも深刻化し、トランプ政権の誕生につながるなど、『ポスト冷戦時代』の変質は明らかでした。

『ポスト冷戦時代』の後の時代は、どんな時代になるのでしょうか。アメリカの影響力はアフガニスタンだけではなく、中東全域から一段と失われ、地域紛争が頻発すると共に、各地域の大国が勝手な振る舞いをするようになるように見えます。米中対立を受けてすでに見られるように、自由な国境移動を前提にした国際経済が、大きく規制を受ける場面も増えるでしょう。更なる分断と対立の時代が待っているのでしょうか。

新しい時代の輪郭が見えるには、まだ時間がかかりそうです。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。