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TBS NEWS

2021年8月9日

今週の注目「金融機関初、政策保有株をゼロに」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

三井住友信託銀行の持ち株会社である三井住友トラスト・ホールディングスは、今年5月、持ち合い株などの政策保有株を将来的に全て売却し、ゼロにする方針を発表しました。主要金融機関で政策保有株をゼロにする方針を示したのは初めてのことで、金融界に衝撃を与えています。

銀行などが取引先の事業会社の株式を持って安定株主として経営を支える一方、貸出や関連の金融ビジネスを一手に引き受けるというビジネスモデルは、かつては当たり前で、日本型資本主義の成功の鍵の一つとされてきました。とりわけ信託銀行にとっては、年金や証券代行業務など幅広い取引チャンスがあるだけに、政策保有株は重要な営業ツールでもありました。

三井住友トラストは、簿価ベースで6051億円の政策保有株のうち、まずは今後2年間で1000億円分売却する計画で、その後、保有先との対話を進めながらゼロを目指すとしています。ゼロにする時期は明示していません。

三井住友トラストの高倉透社長はインタビューの中で、あえてゼロという目標を掲げたことについて「資本市場に対する我々の姿勢がはっきりするし、取引先との関係でもお互いにより深い議論ができる」とその理由を述べました。資本市場への姿勢とはどういうことか、それは「資本や資金の好循環を作ることこそが我々の使命だからだ」と高倉社長は言います。資金を託されて長期的に運用する立場の信託銀行として、資本市場がより健全に機能し、世の中の投資対象である事業会社の市場価値がより適切に評価され、結果としてその価値が上がることが、信託銀行として何より重要だという意味です。

事業会社にしてみれば、金融機関は安定株主であり、それは「もの言わぬ株主」です。しかし、「もの言う株主」を含めた株主ときちんと向き合っていかなければ、強い会社にはなれません。安定株主に守られる立場から、株主の厳しい目にさらされてこそ、企業価値は上がるのです。その意味で、政策保有株は投資効率を上げる妨げになってしまう、というのが、高倉社長の考えです。

ガバナンス強化と資本効率向上に向けた、持ち合い解消の動きは、これまでも起きていましたが、金融機関が政策保有株ゼロを目指すと宣言したことは、日本経済にとってエポックメイキングな出来事です。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。