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TBS NEWS

2021年5月24日

今週の注目「暗号資産の存在感」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

金融市場でビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の存在感が急速に大きくなっています。19日のニューヨーク市場でビットコインが一時30%、イーサリアムが40%も急落し、そのあおりを受けてダウ平均株価が一時580ドルも急落しました。ビットコインの下げが、金融市場の王様であるダウの下げを演出したのです。

昨年来、ビットコインは超金融緩和を受けて急激に値上がりをしてきましたが、今月、『守護神』の役を演じてきたテスラのイーロン・マスクCEOが突然、ビットコインをテスラの自動車購入にあたっては決済手段として受け入れないと表明すると、一気に下げに転じ、そこに中国当局の規制強化が伝えられて、19日の暴落と言ってよい下げにつながったものです。高値の時には1ビットコイン=6万ドルを超えていましたが、19日には一時3万200ドルまで下げました。

ビットコインがこれほどまでに急激に下げた背景には、保有者の大半がヘッジファンドなどの機関投資家やプロの投資家だということがあります。一定の下げを超えれば自動的に売りに転じるため、価格は加速度的に下がりますし、資金を借りてビットコインを保有していれば、価格の急落で証拠金の積み増し、いわゆる追い証を迫られ、そのために株式を売却せざるを得なくなるといった動きも出てきます。19日にはまさにこうした現象が起きたのです。

中央銀行の大量の資金供給で、株も債券もかなり上がってしまい、これ以上の値上がりがそう簡単に望めない中、機関投資家は「持たざるリスク」を回避する意味でも暗号資産を持つようになっています。アメリカの大手の金融機関でも相次いで暗号資産取り扱いの専門部署を作り始めたほどです。暗号資産の中でもパイオニアであるビットコインに続いて、イーサリアム、リップル、更には、最近冗談でできたドージコインに至るまで、その対象も広がりつつあります。暗号資産全体の時価総額は2兆ドル、およそ200兆円と見られ、そのうちビットコインは40%程度、70~80兆円を占めています。日本の東証一部全体の株式時価総額が700兆円余りと聞けば、すでに暗号資産が金融市場で大きな存在になっていることがうかがえます。

『バブルのあだ花』とまで揶揄されるビットコインは、価格変動の大きさゆえに、当初考えられていた決済手段としては意味を持たなくなりつつあります。しかし、価格変動が大きいからこそ投資手段としての魅力は増しているとも言え、暗号資産相場は市場のリスク許容度を示す1つの指標になりつつあるわけです。そうであれば、ビットコイン価格を起点として、連鎖的に市場の急落を招くと言った事態もあり得なくはありません。単なる『あだ花』と切り捨ててはいられません。バブル崩壊のきっかけにもなりかねない市場が、未成熟な市場であれば、なおさらリスクは大きいと言えるでしょう。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。