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TBS NEWS

2021年5月17日

今週の注目「米消費者物価4.2%の衝撃」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

アメリカの4月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で4.2%もの上昇となり、インフレ懸念が一段と台頭、日米ともに株価が急落しました。アメリカの株価は、それ以前から景気の予想以上の回復を受けてハイテク株を中心に下げ基調に転じており、12日の消費者物価発表で、それに拍車がかかり、ダウ平均は2日間で1150ドル、日経平均は3日間で2000円を超える大きな下げとなりました。

各国の中央銀行が物価上昇2%を目指している中で、その倍以上の4.2%と聞けば、市場がショックを受けたのも無理はありませんが、本当にそれほどの衝撃なのでしょうか。

そもそも4.2%はすべての品目を入れた総合指数で、中央銀行が通常使う、変動幅の大きい食品・エネルギーを除いたコア指数でみると3.0%の上昇に留まっています。また、比較対象である前年同月、つまり2020年4月は、新型コロナが全米にまん延、急速な需要減少を受けて、消費者物価指数はその1年前に比べてわずか0.3%上昇にまで落ち込んだ時期でした。つまりベースラインが低かった分、今年は高めに出たわけで、2年間をならしてみれば、年2%ちょっとの上昇と言えなくもありません。従って、見かけの数字ほど驚くべきではありませんし、現に10年物の長期金利も1.6%台で推移するなど債券市場は、これを冷静に受け止めています。

その一方で、心配な面はいくつもあげられます。ワクチン効果で人々の経済活動が戻るにつれて、外食、宿泊、航空などに代表されるサービス需要が急速に拡大し、その価格が大きく上がっています。サービス分野はコストに占める労賃の割合が大きいのですが、子供の世話のために一旦家庭に戻った女性やコロナを機に労働市場を離れた高齢者の労働市場への戻りが鈍く、人手不足による賃金上昇が起きていて、これは今後の物価動向に大きな影響を与えます。また、世界的な急速な需要回復で半導体が不足し、自動車の生産に影響を及ぼし、中古車を含めた価格が上昇している他、銅や木材、コーンなどの商品価格が軒並み上昇するなど、供給面から物価上昇につながる要素も出てきています。

何より、コロナ禍で人々の財布には、政府からの給付金を含め、使いたくて使えなかった現金がうずうずしており、このあとも、インフラ投資など財政拡張策が目白押しです。30年間デフレ或いはディスインフレが続く日本と違って、アメリカはずっと物価が上昇し続けている国でもあり、心配するなという方が無理でしょう。株価はすでにバブルとは言わないまでも、FRBのパウエル議長自身がフロス(細かい泡)と呼ぶほど急速な値上がりが続いただけに神経質になるのも当然です。

消費者物価の上昇率は去年、4月に前年比0.3%と急収縮した後、7月に1.0%、8月に1.3%へと戻していきました。それを考えると夏の終わり頃には、アメリカの物価動向の先行きが、はっきりと見えてくることになりそうです。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。