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TBS NEWS

2021年4月26日

今週の注目「バイデンの増税」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

アメリカのバイデン政権が、コロナ緊急経済対策に、インフラ投資、格差是正に向けた社会政策と、財政拡大路線を一直線に走っています。一時的な緊急対策なら国債増発で賄えますが、恒常的な支出には財源を手当てしなければなりません。このため、必要な財源について、相次いで増税案を打ち出してきています。

バイデン政権は、政権発足後すぐに1.9兆ドルのコロナ経済対策を打ち出し、実現に漕ぎ着けたのにつづき、3月末には2兆ドル以上にのぼる「米国雇用計画」と名づけたインフラ・研究開発投資計画を発表しました。その財源については、15年間にわたる企業増税で賄うとしており、その中心に位置するのが法人税増税です。法人税は現在21%、トランプ政権時代に35%から大きく引き下げられたのですが、これを28%に引き上げるとしています。こうした計画にあわせてイエレン財務長官は4月初めに行われたG20財務相会議などで、国際的な法人税の引き下げ競争を終わらせようと訴え、国際的な法人税最低税率を決めようと呼びかけると共に、トランプ時代には消極的だったデジタル課税のルール作りにも積極的な姿勢に転じました。

1980年代のレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相が旗を振った新自由主義的な経済政策は、小さな政府こそが効率的な市場経済を作ると説き、法人税や所得税の引き下げを促しました。冷戦後のグローバル時代にあっても、企業誘致競争のため、先進各国は法人税の引き下げ競争を演じてきたわけですが、バイデン政権は、法人税減税は大半が自社株買いなどに使われ、投資効果は少なかったと見ており、これ以上の法人税引き下げ競争は「自滅的(イエレン財務長官)」と考えています。

また、バイデン政権は、政権100日を迎える4月末には、経済対策の第3弾である子育て支援や教育投資、格差是正など中心とする「米国家族計画」を発表することにしており、その財源には富裕層への増税が盛り込まれる見通しです。具体的には個人所得税の最高税率を今の37%から39.6%に引き上げ、年収100万ドル(およそ1億円)以上の金融資産譲渡益(キャピタルゲイン)には、この39.6%の税率を適用するとしています。この層への金融資産譲渡益への課税は、現在は20%ということで、負担倍増ということになります。こちらの増税案は、インフラ投資のための法人税増税のように受益と負担に直接的な関係が見出しにくく、「分配のあり方の変更」といえるだけに、大きな抵抗が予想されます。

グローバル化の時代に各国で進んだ格差拡大は、コロナ時代に一層深まっており、バイデン政権は、レーガン時代以来40年続いた『小さな政府志向』に別れを告げ、政府の役割を再規定することで、自ら新たな『ニューディール』と呼ぶ時代に舵を切ることになります。メディアも市場も新政権を温かく見守るという「ハネムーン」の最初の100日間が終わり、バイデン丸は、いよいよ外洋の荒波に漕ぎ出すことになります。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。