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TBS NEWS

2021年4月19日

今週の注目「東芝車谷社長が辞任」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

 東芝の経営トップがまたもや、そのポストを追われました。14日に車谷社長が辞任、本人はメッセージで「東芝の再生が完了したため」と説明したものの、解任決議までちらつかされる中、追い込まれた「無念の辞任」だったと見られます。

 三井住友銀行副頭取から海外ファンド・CVCキャピタルの日本法人トップを経て、2018年に東芝のトップに招かれた車谷氏は、儲かる企業への転換に取り組み、利益率を向上させ、念願の東証1部への復帰を果たしました。

 2019年1月に「Bizスクエア」に出演した際に、車谷氏(当時は東芝会長)は、「東芝を立て直すことは日本の製造業を立て直すことに等しい」と意気込みを語ると共に、「東芝は元来ベンチャー企業だった。新しいオリジナルな技術で社会を豊かにすることこそが、東芝のDNAだ」とめざすべき企業像を示しました。具体的には、過当競争で利益率も低い普及商品分野は売却し、ユニークな技術を持つ「ブルーオーシャン(競合が少ない市場)」での市場開拓を戦略の中心に据えることや、すべてのモノがネットにつながるIoT時代を念頭に、工場の生産設備や店舗のPOS端末などリアルな現場の情報を収集、解析、フィードバックする仕組みづくりに注力することをあげていました。これらの考え方は、今、聞いても説得力があるもので、車谷氏のめざした経営は成果を上げていたと正当に評価されるべきでしょう。

 その一方で、辞任の直接的な引き金になった、車谷氏の古巣であるCVCキャピタルからの買収提案については、首をかしげざるを得ません。この提案に車谷氏自身がどこまで関与していたのか、依然はっきりしませんが、利益相反の疑いを多くの社員や株主に抱かせたのであれば、その責任を問われても仕方ありません。東証一部に復帰してわずか3か月、公に開かれた企業として生きていく宣言をしたばかりですから、なおさらです。

 上場維持はこれまで東芝の最優先課題でした。にもかかわらず、上場維持のための6000億円もの大量増資の結果、入り込んだ海外投資家らの「もの言う株主」に悩まされ、逆に、買収・非上場化を目指したのだとしたら、何とも皮肉な結果です。また、金融の世界に通じた車谷氏が、最も期待されていた投資家集団との関係構築に失敗し、それが命取りになったのですから、これもまた皮肉なことです。

 東芝という企業は、名門と言われながらも、昔から社内抗争の絶えない会社でした。半導体や原発といった国の安全保障に直結する分野も手掛けるだけに政府の干渉も多く、今も福島原発の廃炉に向けた処理作業など「国策会社」の面を強く持っています。それ故、企業存続のために無理な増資まで行って、「もの言う株主」にここまで囲まれてしまいました。経営トップが変わっても、これらを解きほぐして新な成長軌道に乗せるのは、容易なことではありません。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。