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TBS NEWS

2021年3月29日

今週の注目「電力高騰で初の新電力破たん」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

 新電力大手のF-Power(エフパワー)は、24日、東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し、受理されたと発表しました。東京商工リサーチによれば、負債総額は243億円で今年最大の企業倒産となりました。エフパワーは2018年には電力販売量で新電力トップにたったこともある大手ですが、その後は2期連続赤字に陥り、今年1月の電力卸売市場の調達価格高騰を受けて、経営が急速に行き詰ったものです。今後はスポンサー企業を探し、再建を図ることにしており、顧客への電力供給には影響はないとしています。

 この冬の電力ひっ迫は、燃料であるLNG=液化天然ガスの需給がタイトになっていたことに加え、全国的な厳しい寒波で一気に電力需要が増えたことで現実のものになりました。停電といった最悪の事態は避けられたものの、主に市場から卸電力を調達して小売販売している新電力各社は、電力調達価格、つまりコストの急騰に直面し、すでに、事業打切りや新規契約の獲得中止に追い込まれたところも出ていました。卸価格が急騰した1月の調達分への支払期限が相次いできていることから、今後、経営危機に直面する新電力がさらに出てくることが懸念されています。

 それにしても、自分で発電する設備を大して持たず、市場から電力を買ってきて転売するだけの企業を新「電力」会社と呼ぶこと自体、不思議なことです。確かに天気が良くて太陽光発電がすべて稼働すれば、再生エネルギーを主体とする新しい事業者からの電力調達も一定期待できますが、特に悪天候の時などは、卸市場に電力を供給するのは、圧倒的に東京電力や関西電力など9電力なのです。卸価格が安い時には、誰でも儲けが出ますが、逆に卸価格が高騰すれば、経営が成り立たないのは目に見えているでしょう。こうした新電力企業は、登録しただけの企業も含めると、去年12月時点で、この狭い日本に698社もあるのです。

 確かに電力自由化策は、9電力による地域独占で電力価格が高止まりする状況を突破するきっかけになりました。多少でも価格によって消費者が電力会社を選ぶ眼をつけ、その先にある発電内容にも関心を持ち、再生エネルギーによる発電を促進する効果もありました。しかし、今年の冬程度の寒さや燃料高騰で倒産するような会社と同じような脆弱なビジネスモデルの電力会社が何百社もあることが本当に国民生活にプラスになっているのでしょうか。

 一番大切なことは、電力の安定供給のはずです。それは中長期的に、発電能力の面でも送配電網の面でも持続可能な仕組みをつくるということでしょう。今回の電力卸価格急騰を機に、これまでの自由化政策を検証し、再点検すべき時に来ています。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。