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TBS NEWS

2021年3月22日

今週の注目「催促相場に事実上のゼロ回答だったFRB」

[ TBSテレビ報道局 上席解説委員 播摩卓士 ]

 長期金利の急騰で一躍注目を集めたアメリカの中央銀行FRBの決定会合が17日、終了しました。パウエル議長は「今年の物価上昇はあったとしても一時的で」「経済の完全な回復には程遠く」「金融政策が経済を支え続ける」などと述べて、2023年までゼロ金利政策を継続する姿勢を改めて強調しました。リップサービスは色々してくれたものの、市場が望んでいた長期金利上昇を抑え込むための、国債購入の拡大やツイストオペ(短期を減らして長期を増やすといった入れ替え)の採用、さらには日銀が導入している長短金利操作(YCC)などの具体策には何も踏み込まず、催促相場には事実上のゼロ回答となりました。

 金融市場はこのメッセージをどう受け止めればよいのか、戸惑っているように見えます。決定会合当日は、ゼロ金利継続というリップサービスに安堵したものの、翌18日には物価上昇への不安感から、10年債の利回りが一時1.75%にまで上昇し、ハイテク株の多いナスダック指数は3%も下落するなど、長期金利ショックの余波は続いています。

 一連の出来事、私には、FRBが長期金利の自然な上昇を市場に織り込ませようとしているように映ります。

 経済対策やワクチン効果で経済が回復すれば、成長率が高まり、物価が上がり、長期金利が上昇するのは、当たり前のことです。それが健全な経済であり、日本のようにいつまでも物価も金利も上がらないのは異常な世界です。そのことは百も承知で、FRBは「経済回復」と「低金利」という二匹の青い鳥が併存すると言い続けているのです。そう言い続けることが経済回復を確かにする手段だからです。経済が回復するにつれて、市場や実体経済にダメージを与えない速度で、緩やかに長期金利が上がっていくことが理想的なのでしょう。長期金利は市場で決まるもの。国債が売買される債券市場から市場機能が失われては困るというのが基本的な立場なのです。だからこそ、催促相場にもゼロ回答だったと言えるでしょう。そこにはもちろん、市場機能を毀損してしまった日本の姿が見えています。

 長期金利を0%程度にコントロールする前代未聞の政策を採った日銀は、今、金融機関の体力回復のため、市場機能を少しでも復活させようと大変な苦労をしています。ETFという株式まで購入することに手を染めた日銀は、もうこれ以上、優良銘柄を買い入れられない状況になり、年間購入額6兆円という目安を撤廃しました。それでも株価の急落を恐れて、購入をやめるとは言えないのです。いったん、市場に介入し、その機能を損なってしまうと、そこから容易に抜け出せない状況に追い込まれているのです。

 FRBの、つれないゼロ回答に、中央銀行としての、ある種の「矜持」を感じたのは、私だけでしょうか。

播摩卓士

播摩卓士(TBSテレビ報道局 上席解説委員)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。ワシントン支局長、NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。