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TBS NEWS

2020年9月21日

今週の注目「日立、イギリスの原発から撤退」

[ TBS報道局 解説・専門記者室長 播摩卓士 ]

 成長戦略の柱の1つだった原発の海外輸出、ついに案件がゼロになりました。

 日立製作所は16日、イギリス中西部アングルシー島で原子力発電2基を新設する計画から撤退することを正式に決定しました。このプロジェクトをめぐっては、安全対策などで当初の計画よりコストが膨らんだことから、すでに去年1月、プロジェクトの凍結を決めていましたが、その後もイギリス政府からの追加支援や、民間企業からの出資拡大が見込めず、撤退を最終判断したものです。日立はすでに3000億円の損失を計上しており、正式撤退に伴う経営への影響は軽微だとしています。これにより政府が成長戦略の柱の一つと位置付けてきた原発の海外輸出は案件がゼロになりました。

 原発などのインフラ輸出は旧民主党政権時代からスタートし、東日本大震災後も国内の原発新設が見込めない中で、原発のメインテナンスや廃炉の技術を維持するためにも輸出が必要といった理屈も加わって、安倍政権は「官民一体での取り組み」を強めました。しかし、震災後の安全対策費用の増加を民間事業者だけで負担することが難しくなった上、建設コストの面でも、国家プロジェクトとして取り組む中国やロシアとの競争が厳しくなり、一時、有望視されたベトナムやトルコでも日本は撤退に追い込まれました。

 考えてみれば、福島第一原発事故を起こした国、しかも国内で再稼働すらままならない国が、原発を他の国に売ろうとすること自体、真っ当な発想ではなかったのかもしれません。

 官民一体の名のもとに売り込みに税金も使い、民間企業も多額の損失を計上しました。具体的な案件がゼロになった国の成長戦略とは一体、何だったのか。政権が交代した今こそ、失敗の原因を見据えて、思いつきではない成長戦略をしっかり組み立てるべき時なのでしょう。

(BS-TBS「Bizスクエア」 9月20日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局 解説・専門記者室長)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。