NEWSの深層

TBS NEWS

2020年6月20日

同時検証「コロナ禍」の日々(51)「緊急事態宣言 全国解除」の裏側【その3】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 5月25日の安倍総理の記者会見は、冒頭発言で「緊急事態宣言の全面解除」表明、そして「わずか1か月半で今回の流行をほぼ終息させることができました。正に日本モデルの力を示すと思います」などと語った「自己評価」、そして、第2次補正予算(31兆9000億円)に盛り込んだ多岐にわたる「経済対策」の説明と続いた。ただ、「感染拡大防止」と「経済回復」の狭間で、「時期尚早」との見方も残る中での政治決断だけに、途中から安倍総理の話のトーンは変わった。

 安倍総理は「ただ一点、強調しておかなければならないことがあります」と前置きして、「それは、緊急事態が解除された後でも私たちの身の回りにウイルスは確実に存在しているということであります」と語った。

 そして、「ひとたび気を緩め、ウイルスへの警戒、感染予防を怠った途端、一気に感染が広がっていく。これがこのウイルスの最も怖いところです」と強調し、「感染防止を徹底しながら、同時に社会経済活動を回復させていく。この両立は極めて難しいチャレンジであり、次なる流行のおそれは常にあります」とクギをさした。

 続けて「それでも、この1か月余りで国民の皆様はこのウイルスを正しく恐れ、必要な行動変容に協力してくださいました」と振り返り、「こまめな手洗い。今や外出するときはほとんどの方がマスクを着けておられます。店のレジは、人と人との距離を取って列をつくるなど、3つの密を避ける取り組みを実践してくださっています」と語った。そして、「こうした新しい生活様式をこれからも続けてくだされば、最悪の事態は回避できると私は信じます」と、記者会見での「お決まりのポーズ」、口を真一文字に閉じた。

 そして、「3つの密が濃厚な形で重なり、これまでも集団感染が確認された夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどについては、御協力を頂いていることに感謝申し上げます」と語り、「こうした施設も、専門家の皆さんに御協力いただきながら、来月中旬をめどにガイドラインを策定し、上限200万円の補助金により、有効な感染防止対策が講じられるよう支援する考えです。それまでの間、どうか身を守る行動を続けていただきますようにお願いいたします」と両手を胸の前に差し出しながら呼びかけた。

 安倍総理は「こうした取り組みを重ねてもなお、感染者の増加スピードが再び高まり、最悪の場合には、残念ながら2度目の緊急事態宣言発出の可能性もあります」と語り、「しかし、私は、外出自粛のような社会経済活動を制限するようなやり方はできる限り避けたいと考えています。市中感染のリスクを大きく引き下げていけば、それが可能となります」と力を込めた。

 そして、「そのためには、感染者をできるだけ早期に発見するクラスター対策を一層強化することが必要です。その鍵は、接触確認アプリの導入です」などと、陽性が判明した人と一定時間近くにいた人のスマートフォンに自動的に通知するアプリの導入を説明したりした。

 「緊急事態宣言の全面解除」とともに、「第2波」や「2度目の緊急事態宣言」にも多くの時間を割く様子はなにやら奇妙に見えた。手元の、朝の朝日新聞の世論調査では「感染が再び拡大することをどの程度心配していますか」との質問に、「大いに心配している」45%、「ある程度心配している」47%とあった。9割以上が「第2波」を心配している中での「解除」なのだった。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞