NEWSの深層

TBS NEWS

2020年6月19日

同時検証「コロナ禍」の日々(50)「緊急事態宣言 全国解除」の裏側【その2】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 新型コロナの「感染拡大防止」と「経済回復」。二律背反の中での5月25日の「緊急事態宣言」の全面解除だっただけに、安倍総理の経済対策の説明は多岐に及んだ。安倍総理は「社会経済活動を厳しく制限するこれまでのやり方では、私たちの仕事や暮らし、そのものが立ち行かなくなります。命を守るためにこそ、今、求められているのは、新しいやり方で日常の社会経済活動を取り戻していくことだと思います」と左手を掲げた。

 安倍総理は「本当に多くの事業者の皆さんが、この瞬間にも経営上ぎりぎりの困難に直面しておられる中で、更なる時間を要することは死活問題である。そのことは痛いほど分かっております」と左手で、胸の前を切って見せた。「それでも、希望は見えてきた。出口は視野に入っています。その出口に向かって、この険しい道のりを皆さんと共に乗り越えていく。事業と雇用は何としても守り抜いていく」と口を真一文字に結び、「その決意の下に、明後日、2次補正予算を決定いたします」と、今度は両手を胸の前で結んで見せた。続けて、「先般の補正予算と合わせ、事業規模は200兆円を超えるものとなります。GDPの4割に上る空前絶後の規模、世界最大の対策によって、この100年に一度の危機から日本経済を守り抜きます」と、第2次補正予算(31兆9000億円)に胸を張って見せた。

 安倍総理の経済対策を巡る「演説」は止まらない。「総額で130兆円を超える強力な資金繰り支援を実施します。経済全体を牽引(けんいん)する大企業、地域経済を支える中小企業、オンリーワンの技で成長の原動力となってきた中堅企業、規模の大小にかかわらず、政策投資銀行や公的ファンドを通じて、劣後ローンや出資など資本性の資金を供給します。身近な地銀、信金、信組などによる実質無利子、最大5年元本返済据置きの融資も進んでいます。必要な方に支援を一日も早くお届けできるよう、全力を尽くします」と両手を掲げたりしながら早口で語った。

 プロンプターを左右に見ながらの「語り」は、ここまでくると段々盛り上がってくる。今朝の朝日新聞の「内閣支持 最低の29%」との見出しも忘れたようだった。「事業を存続するために待ったなしの固定費負担も大胆に軽減していきます。人件費への助成を、世界で最も手厚いレベルの1万5,000円まで特例的に引き上げます。雇用をされている方が直接お金を受け取れる新しい制度も創設します。店舗の家賃負担を軽減するため、最大600万円の給付金を新たに創設します。使い道が全く自由な最大200万円の持続化給付金についても対象を拡充し、本年創業したばかりのベンチャー企業の皆さんにも御活用いただけるようにいたします。地方の実情に応じた事業者へのきめ細かな支援も可能となるよう、地方創生臨時交付金も2兆円増額いたします」と。そして、「コロナの時代の新たな日常、その的に向かって、これまでになく強力な3本の矢を放ち、日本経済を立て直してまいります。経済再生こそがこれからも安倍政権の一丁目一番地であります」。

 しかし、6月13日の日経新聞は、安倍政権の取り組みを浮き彫りにする。「持続化給付金」は申請199万件超に対し給付は149万件の75%。日本政策金融公庫の「実質無利子・無担保融資」は54.7万件の申請に対し、融資は40.1万件の73%。雇用調整助成金は15.5万件の申請に対し給付は8.7万件の56%。1人10万円の「特別定額給付金」にいたっては39%だ(日経新聞6月13日朝刊)。安倍総理の掛け声の裏で、なにかがおかしくなっているのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞