NEWSの深層

TBS NEWS

2020年6月18日

同時検証「コロナ禍」の日々(49)「緊急事態宣言 全国解除」の裏側【その1】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 ようやくその日がやってきた。5月25日夜に安倍総理が記者会見に臨み「緊急事態宣言」の全面解除を宣言するのだ。4月7日の「緊急事態宣言」以来、約1か月半。しかし、お祝いムードは全くなかった。「感染拡大防止」と「経済回復」の二律背反の中、なおも北海道や神奈川県が新規感染者の目安を下回らないままでの「政治判断」で、多くの人は「第2波」を心配していた。しかも、これまで、新型コロナの感染拡大の中でも比較的高水準を維持していた内閣支持率が24日付の毎日新聞で27%に急落し、この記者会見当日25日の朝日新聞朝刊でも29%なのだ。1社だけでなく2社の世論調査の結果は、幅広く有権者の気持ちが安倍政権から離れてしまったことを示していたのだ。

 紺のスーツに、紺に白のストライプのネクタイ姿で記者会見場に現れた安倍総理は、「本日、緊急事態宣言を全国において解除いたします」と語ると、口を真一文字に閉じた。そして、「足元では、全国で新規の感染者は50人を下回り、一時は1万人近くおられた入院患者も2,000人を切りました。先般、世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を、全国的にこの基準をクリアしたと判断いたしました」と力を込めた。

 そして、「3月以降、欧米では、爆発的な感染拡大が発生しました。世界では、今なお、日々10万人を超える新規の感染者が確認され、2か月以上にわたり、ロックダウンなど、強制措置が講じられている国もあります」と指摘したうえで、「我が国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでも、そうした日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います」と自慢してみせた。

 続けて、「全ての国民の皆様の御協力、ここまで根気よく辛抱してくださった皆様に、心より感謝申し上げます」と力を込め、左右のプロンプターを見ながら「感染リスクと背中合わせの過酷な環境の下で、強い使命感を持って全力を尽くしてくださった医師、看護師、看護助手の皆さん、臨床工学技士の皆さん、そして保健所や臨床検査技師の皆さん、全ての医療従事者の皆様に、心からの敬意を表します」と語った。

 そして、「日本の感染症への対応は、世界において卓越した模範である。先週金曜日、グテーレス国連事務総長は、我が国の取り組みについて、こう評価してくださいました」と口を真一文字に閉じ、両手を胸の前で開きながら「我が国では、人口当たりの感染者数や死亡者数を、G7、主要先進国の中でも、圧倒的に少なく抑え込むことができています。これまでの私たちの取り組みは確実に成果を挙げており、世界の期待と注目を集めています」と改めて自慢して見せた。

 続けて安倍総理は「そして本日、ここから緊急事態宣言全面解除後の次なるステージへ、国民の皆様とともに力強い一歩を踏み出します。目指すは、新たな日常をつくり上げることです。ここから先は発想を変えていきましょう」と呼びかけた。

 ただ、言葉は華々しいのだが、安倍総理の様子は、前回14日の「緊急事態宣言の一部解除」の記者会見に比べて身振りが少なく、表情も疲れて見えた。この、わずか10日間だったが、その間に起きた検察庁法改正案の採決見送りや黒川東京高検検事長の賭けマージャンによる辞任、それらを背景にした支持率急落が相当響いているようだった。 手元にある朝の朝日新聞の世論調査では、新型コロナウイルスについて、「これまでの政府の対応を評価しますか」との質問に「評価する」30%に対し「評価しない」が57%だった。そして、「安倍首相の対応を見て、首相への信頼感は高くなりましたか」との質問では「高くなった」が5%で、「低くなった」が48%だった。「やれやれ」と思った。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞