NEWSの深層

TBS NEWS

2020年6月17日

同時検証「コロナ禍」の日々(48)「内閣支持率急落ショック」

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 緊急事態宣言の一部解除を安倍総理が表明したのは5月14日夜の記者会見。「感染拡大防止」と「経済回復」の「二律背反」の中で苦悩の表情を見せながらも、「39件については、いずれも、今後、徹底的なクラスター対策を講じることで、感染拡大を防止できるレベルまで抑え込むことができると判断いたしました」と力を込めた。

 しかし、これから間もなく、「驚愕」の世論調査が関係者を震撼させることになったのだ。毎日新聞は24日付の朝刊一面アタマで「内閣支持急落27%」と報じたのだった。

 この時は、そんなことはわかる由もなく、翌日には「検察庁法改正案」の衆議院内閣委員会での審議と、「採決強行」に踏み切る構えだったわけだった。もちろん、採決は見送りに追い込まれ、定年延長を閣議決定した黒川検事長は賭けマージャンで辞任するなんて夢にも思わなかっただろう。しかし、記者会見の裏側で広がっていた有権者の怒りは激しかった。

 この時の毎日新聞の世論調査では、「新型コロナウイルスの問題で安倍政権の対応を評価しますか」との問いに、「評価する」はわずか20%、「評価しない」は50%と2倍強の差だった。

 そして「安倍内閣は黒川検事長の定年を今年の2月から延長していました。安倍内閣の責任について、どう思いますか」との問いには、「安倍晋三首相に責任がある」が28%で、「首相と法相の両方に責任がある」が47%、と合わせて7割以上が安倍総理の責任を重く見ていた。

 ただ、この調査は「コールセンターで多数の調査員が作業する環境は新型コロナウイルスの感染リスクが指摘されるため、感染収束が見通せない中でこの調査方法を続けることはできないと考えています」との「おことわり」がついていて、「調査方法が異なるため単純に比較することができない」とのことだった。

 しかし、毎日新聞の世論調査の2日後に朝日新聞が一面で「駄目押しの一発」をお見舞いすることになる。「内閣支持 最低の29%」「本社世論調査 不支持は52%」。記事には支持率について「2012年12月に安倍政権が発足して以来、最低となった」とあった。

 そして、「新型コロナウイルスに対する政府の対応を『評価しない』は57%にのぼり、『評価する』は30%だった」「新型コロナ対応を通じて安倍晋三首相に対する信頼感が『低くなった』人は48%と半数に迫り・・・」とあった。そして、「黒川検事長の辞任」については、「『安倍首相の責任が重い』と答えた人は68%に達した」と、なんとも厳しい状況だった。

 5月14日の記者会見での安倍総理は、なおも「検察庁法改正案」について強気で、あとから考えるとなんとも痛々しい。

 記者から成立を一旦見送る考えはないかと問われた安倍総理は「検察庁法の改正についてでありますが、今般、正に公務員全体の定年延長に関わることでもあるわけでございますが、言わば、政府としては御承知のように、今、コロナウイルス感染症の拡大防止に全力を挙げて、100パーセントの力を入れて取り組んでおります」と前置きをした上で、メモを見ながら「検察庁法の改正法案は、高齢期の職員の豊富な知識や経験等を最大限に活用する観点から、一般職の国家公務員の定年を引き上げること等に合わせて、検察官についても同様の制度を導入するものであります」と左手を差し出して説明してみせた。

 その後は、胸の前で両手をゆすって見せて「そして、そもそも検察官は行政官であります。行政官でございますから、三権分立ということにおいては正に行政、言わば強い独立性を持っておりますが、行政官であることは間違いないのだろうと思います」という。

 さらに、「また、今度は、内閣が任命するというのは、おかしいではないかと言われておりますが、そもそも従来から内閣または法務大臣が行うこととされておりまして、認証官については内閣が行う、それ以外については法務大臣が行うことでございます」と身振りを交えて語り、「今までと全く変わりがないということでありまして、今回の改正により、三権分立が侵害されることは、もちろんありませんし、恣意的な人事が起こるようなことは全くないということは断言したいと、このように思います」と力を込めた。

 そして、「また、黒川さんの人事についてはまだ決めておりませんから、ここで、正に私がそれを申し上げるというのは恣意的になるのではないかと思いますので、今、この段階では申し上げることができないということであります」と、自らのレトリックが気に入っているのか苦笑いしながら語り、「また、国民の皆様の理解が深まるように努力を重ねていかなければならないと、こう思っています」と余裕の表情を見せた。

 ただ、ツイッターの激しい批判の中、翌日から黒川検事長の辞任に至る「検事長定年延長政局」に陥ることになったわけだ。力を込めたにも関わらず、「国民の理解」は深まらなかったということだった。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞