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TBS NEWS

2020年6月6日

同時検証「コロナ禍」の日々(40)「検察定年延長政局」【その7】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 5月15日の衆議院内閣委員会では野党の質問が終われば「検察庁法改正案」の採決が見込まれていた。

 質疑では政府の判断で検察幹部の定年を延長できる規定が人事や捜査への政治介入を招くとして、立憲民主党の後藤祐一氏が「検察幹部の定年延長の基準」を繰り返し質し、そのイメージを文書の形で提出するよう求めた。これに対し森法務大臣は「今後定めていく事由については、人事院規則に準じて定めてまいりたいと思いますので、今すぐ出すことは困難であると考えております」などと、答弁書を見ながら繰り返した。

 後藤氏が質問を続ける中、内閣委員会の部屋は野党の質問が終われば起きるであろう「採決強行」に向けて野党議員が集まり始めた。「3密」を避けるために開けた窓からは、ドンドコドンドコと太鼓の音が響き、拡声器からの「検察庁法改正反対」「強行採決絶対反対」との声が響いていた。

 ここにきて気づいたのだが、外の人たちは「ユーチューブ」などで国会中継をみているのだろう、予定で行けば後30分ほどで採決となる事態に、太鼓の音は激しさを増し、反対の声は絶叫調になっていた。合わせて、集まった野党議員のヤジもボルテージが上がり、後藤氏の口調も激しくなっていった。

 その後も、検事の「定年延長基準」について質す後藤氏に対し、森法務大臣は「人事院規則に準じて定めてまいりたい」と繰り返した。たまらず、野党の理事が委員長席に行き、抗議を始め、与野党双方の席からのヤジで委員会室は騒然となった。

 与党席からは「答えられない質問するなよ」と大声があがり、野党席からは「答えられないことするからだよ」と応酬の声があがり、委員長の周りで抗議する野党の理事には与党席から「座れよ」とヤジがとんだ。

 しまいには後藤氏は委員長の「後藤祐一君」との指名にも、座ったまま首を横に振って質問を拒んだ。委員長は「後藤祐一君。もう一度」「後藤祐一君」と何度も呼びかけたが、後藤氏は座ったままだった。騒然とする中、「時間でーす」「時間でーす」と質問時間が終わっていると自民党席から大声が上がり、一方、野党席からは「これを許したら国会終わりだよ」と大声があがった。

 そして、後藤氏は質問席に座ったまま「国会で審議するのはなんのためですか」「何のため国会議員やっているんですか」と叫んだ。委員長は、困った様子で「質問者の質問趣旨に森法務大臣は答えたつもりと思っていらっしゃると思うが後藤祐一君は答えてないとおっしゃる。どこが答えてないのか、どうなのか。もう一回だけ後藤祐一君」などと繰り返して質問するよう水を向けると、しばらくして後藤氏は立ち上がり、森法務大臣に「人事院規則ができるまでこの委員会で基準のイメージは示せないということでよろしいですか」と質した。

 騒然とする中、森法務大臣は「人事院規則を早く作っていただけるよう要請した上で、その内容に準じて作ってまいりますし、しっかり手続きも、閣議了解をとるなどの適切なプロセスをとっていきたいと思います」と答えた。これには「この委員会いらねーじゃねえか」「ダメだダメだあ」と声があがり、与党席からは「終わり、終わりっ」っとヤジがとんだ。

 憤然とした表情の後藤氏は座ったままで、委員長は「後藤祐一君、持ち時間経過しておりますので」「後藤祐一君の質問時間は終わりました」「次の質問者に席を空けてください。空けてください」と困った表情で呼びかけた。

 それでも後藤氏は座ったままで、「終わってるよ」などと自民党席からヤジが飛んだ。委員長は「申し訳ありませんが時間が経過しております。是非、次回の機会にまた質問をして…」と懇願調になり、これに後藤氏は立ち上がったのだが、「じゃ次の機会までに準備して具体的イメージを示していただかないと…」と大声で話を始め、「時間守れっ」などと激しいヤジを浴びた。

 騒然とする委員会室の中、後藤氏は顔を紅潮させ、資料を片手に両手を広げて振り上げ、「そうしないと国会で審議する意味ってなんですか。真摯な姿勢ってなんですか。なんのために法務大臣ここに来たんですか。なにが真摯な姿勢ですか…」と叫んだ。さらに困った表情の委員長は「後藤君。後藤君。質問時間、過ぎてますので発言席、ご退席ください」と大声を出した。またもやヤジで騒然とする中、後藤氏は「審議を続けることを強く要求して終わりますっ」と叫び、野党席からの拍手に迎えられた。

 「採決強行」まであと20分のはずだった。ドンドコドンドコと外の太鼓のビートが響き、「検察庁法改正反対」「強行採決絶対反対」との連呼の声はさらに激しくなっていった。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞