NEWSの深層

TBS NEWS

2020年6月2日

同時検証「コロナ禍」の日々(37)「検察定年延長政局」【その4】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 政府・与党が成立を目指す「検察庁法改正案」は、野党が求める公務員の定年延長を盛り込んだ「国家公務員法改正案」と一束にして国会に提出されたため、まずは、武田担当大臣が答弁に立つといういびつな形だった。午後2時40分ごろ、森法務大臣が水色のワンピースに白のジャケット姿で秘書官を従えて委員会室に入ってくると、スチールカメラは激しくシャッターを切り、「カシャッ、カシャッ」との音が部屋に響いた。

 国会の外でデモをする人達の「検察庁法改正反対」「強行採決絶対反対」との叫び声と、ドンドコ太鼓の音が響く委員会室の中で、後藤氏は「お待ち申し上げておりました」と質問を始めた。そして、「森大臣は今週火曜日の記者会見であらゆる機会をとらえて国民の皆様のご疑念や誤解等に対して真摯にご説明してまいりたいと思うと発言し、丁寧に説明するとも発言している。最も本来的な説明の場であるこの検察庁法改正案を議論しているこの内閣委員会の場で真摯に丁寧に説明いただくことをまずお願い申し上げたい」と森大臣をにらみつけた。

 続けて、「まず冒頭、本日、松尾邦夫元検事総長ら検察OBが法務省に対して検察庁法改正案に反対する意見書を提出すると聞いている。松尾元検事総長は、ロッキード事件を捜査し、事務次官も務めそして検事総長、検察官の適格審査会の委員。まさに日本の検察を代表する方と言って良い。森大臣、まだ手元には意見書届いているのか。まだ分からないが、松尾元検事総長ら検察を代表する方々が検察庁法改正案に反対し、法務省に意見書を提出されることについてどう受け止めているか」と声を張り上げた。

 これに、自民党席からは「がんばれー」などと声があがり、森大臣は神妙な表情で「ご指摘の報道は承知しております。検察庁法改正案についてさまざまなご意見があることは承知をしておりますので、引き続き真摯にご説明して参りたいと存じます」とかわした。これに後藤氏が「3時か3時半には法務省に持っていくのでそれを読んで本日中にコメントをしていただけるか。今真摯に説明するとおっしゃったんですから。ちゃんと意見書を手にしてから本日中に法務大臣としてのコメント出すことを約束ください」とたたみかけると、自民党席からは「来るかどーかわかんないだろ-」と大声があがった。

 その中、森法相は「ご指摘の報道があることは承知をしておりますので、引き続きあらゆる機会に丁寧に真摯にご説明して参りたいと思います」「ご指摘の報道があることは承知しておりますが、仮定のご質問にはなかなかお答えをすることができませんが、いずれにせよ、真摯にご説明を申し上げているという姿勢は変わりなく続けていきたいと思います」などと繰り返し、自民党席の「援軍」からはさかんに「そーだ」「そーだ」「よーし」などと声が上がった。後藤氏は「このあと意見書届くでしょうから、コメント出さなかったら真摯な姿勢ではない」と声を張り上げた。

 間もなく、起きるであろう「採決強行」を控え、委員会室の中は緊迫していた。

 そんなやり取りの中でも、外の拡声器からはドンドコドンドコ「検察庁法改正反対」「強行採決絶対反対」との叫び声が委員会室に響いて、後藤氏は「この声聞こえますか」と言うとしばらくその声を聴き。「これが国民の声なんですよ。ネットの上でだけではない。皆さんの声なんですよお」と大声をあげた。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞