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TBS NEWS

2020年5月30日

同時検証「コロナ禍」の日々(35)「検察定年延長政局」【その2】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 「緊急事態宣言」の下での自粛生活の中、国会で審議が始まった検察庁法改正案への抗議がネット上で急速に広まっていた。政府の判断で検察幹部の定年を延長できる規定が『人事や捜査への政治介入を招く』と問題視されツイッター上で投稿が相次ぐ中、この日の衆議院予算委員会の質疑は始まったっけ。

 そう、改正案は、法務省官房長などを務め、「官邸の番人」とまで呼ばれる黒川検事長(この時)の定年延長を「後付け」するとともに、検察幹部の「出口」での「官邸の関与」は、検察庁への官邸のにらみを利かせる「効果」が見込まれるものだったのだ。

 新型コロナ対策で妙に隙間の目立つ委員会室で、眼前では立憲民主党の枝野代表が質問に立った。

 野党席から拍手が起きる中、枝野氏は「感染症危機には与野党で最大限協力すべきだというこの基本姿勢は何ら変わるものではありません」と声を張り上げると、「ところが先週の金曜日、一方では政治決断が遅いのに、政府与党はこの危機を悪用するかのように、検察庁法の審議を強行しました。この点の指摘をせざるを得ません」とさらに声を張り上げた。委員会室には「とんでもないっ」と声があがった。

 枝野氏は「そもそも国家公務員法改正案の中に束ね法案という脱法的な手法で潜り込ませて検察官の人事のことを入れています。所管の法務大臣の出席もなく、担当である法務委員会の関与もなく、国家公務員法改正のおまけのような扱いで審議が強行されました。私たちは国家公務員法の改正には大筋賛成です。こちらについては感染拡大防止に配慮しながら、審議を進めることに協力したいと思います」と語りかけるように前置きをした。そんな、様子を安倍総理は足を組み手持ち資料をペラペラめくりながら眺めていた。

 枝野氏は「しかし、検察庁法改正は安倍政権が、黒川検事長の定年を違法に延長した、脱法的に延長したことを事後的に正当化しようとするものです。また違法があれば総理大臣すら逮捕することができるその検察庁の幹部人事を内閣が恣意的にコントロールできるという権力分立原則に抵触する大問題です」と。どさくさ紛れに火事場泥棒のように決められるようなことじゃありません」と大声を出し、「そうだっ」などとの声で委員会室は騒然となった。

 枝野氏は「今、感染症対策以外の国政重要案件については、国民の皆さんもそして国会も落ちついた議論ができないし、すべきではない状況です。感染症拡大防止のために、集会やデモもできません。そんな中、ツイッターでは『#検察庁法改正案に抗議します』というハッシュタグが約1日で約500万ツイートという記録的なトレンドとなりました」とさらに、力を込めて見せた。

 そして、「検察庁法改正の中身については今日は聞きません。総理は感染症危機を乗り越えることよりも、こうした世論に背を向けて自分に都合のいい法律をつくることを優先して危機の状況を政治的に悪用しようとしてるんじゃないですか」とし、「火事場泥棒のようだという指摘があります。火事場泥棒は、火事に真摯に向かい合っていない。軽く向き合っているからできることです。まさにその状態じゃないですか」と大声をあげると、「そうだあ」などとの声が沸き起こり、また委員会室は騒然となった。

 これに安倍総理は、すました顔で「法案の審議のスケジュールにつきましてはまさに国会でお決めになることでございますが、国家公務員については今後、これまで行政を支えてきた多くの職員が60歳を迎える中で、その知識、技術、経験等を持つ職員に最大限活用してもらいつつ、複雑高度化する行政課題に的確に対応していくためできる限り速やかに定年を引き上げることが必要であると認識をしております」などと語り、野党席から「関係ないよっ」とのヤジが上がった。

 それでも、安倍総理は「定年引き上げは職員の職業生活設計(?)に大きな影響があることから早い段階での周知を含めて、準備には相当の期間を要するのであります。また地方公務員についても国家公務員と同様に、所要の法律案を提出しているところでありまして、自治体での条例制定も見据えると、今国会で法案を成立させる必要があるものと考えています」などとメモを見ながら畳みかけるように語り、委員会室にヤジが飛び交う中、委員長が両手をあげて制したりした。

 喧噪の中、安倍総理は「その際、今般の検察庁法の改正部分の趣旨、目的もこれと同じであり1つの法案として束ねた上で、ご審議をいただくことが適切であると承知をしているところでございますが、重ねて申し上げますが、まさに法案審議のスケジュールにつきましては国会でお決めいただくことでございます」と語り、枝野氏は憤然とした表情で「国民の皆さん、安倍総理は自由民主党の総裁で、自由民主党と公明党がこの火事場泥棒的な審議の強行をしているんだということを是非覚えておいてください」と大声をあげた。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞