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TBS NEWS

2020年5月29日

“9月入学構想”に教育現場や学生たちから「なぜ今?」の声

[ TBS科学担当解説委員 齋藤泉 ]

新型コロナで全国の多くの公立学校などで臨時休校が長引くなか、学習の遅れを解消するために浮上した「9月入学構想」。教育現場などはどう受け止めているのか?

〇 「9月入学構想」に対する教育現場の声は・・・

もともとは全国の知事17人が共同提案し、小池都知事も「グローバルスタンダード」に合うと賛同。安倍首相も意欲を示して検討が始まった。

しかし、小中・高等学校などの教育現場からは「何かコロナのどさくさに紛れてという感がある」という声が多い。もちろん、いつかは9月入学にシフトすべきとの考えを持つ人もいるが、コロナで遅れた学習を取り戻すためという理由ではなく、これとは切り離して社会全体で議論すべきだという。

実際、9月入学に移行するとなると、8月末までの誕生日の児童生徒と、9月1日以降に生まれた児童生徒との学年分けを同時に進めることになる。少なくとも数年の準備期間、移行期間が必要だというのだ。

〇 「9月入学」のメリットとデメリットを考える

まず、メリットは…

・世界標準に合わせることで時期的なずれがなくなり海外留学がしやすい。同時に留学生を受け入れやすくなる。また、大学生などの場合は外資系企業への就職活動がしやすくなる

一方、デメリットは…

・9月からということになると5か月遅れることになり、今の状況では事実上1年近い遅れになる。世界的には就学時期を早める傾向がある中で日本は遅れていいのか。

・国の会計年度は4月からなので制度改正が必要になる。そのために費用が莫大にかかる。文科省は約5兆円と試算している。

全国連合小学校長会も文科省に提出した意見書で「学校再開時の課題解決と並行して議論すべき内容ではない。拙速に変更するには課題が多すぎる」と主張、日本教育学会も「子供たちを混乱に巻き込むだけ」と異議を唱える。

〇 大学生や専門学校生は「まずは学ぶ機会の確保を」

コロナ禍で親などの収入やアルバイトが激減するなどして学生の2割程度が退学を検討しているという。学生たちで作られた「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査で分かったもの。これまでは学生の約75%がアルバイトをしていたが、コロナの影響でアルバイト収入が減ったという学生が40%。ゼロになった学生が30%近くいる。

9月入学についてFREEのメンバーは「十分な議論がなく社会全体の理解が得られないまま導入すると、学生の間にさらに負担や不安、問題が生まれる。今は学ぶ権利そのものが危ぶまれているので、まずその担保に力をいれていただきたい」と訴える。

そもそも、現在の学費も払えないのに留学する余裕などある訳がない。また、いつになったら自由に渡航できるのかの見通しもたたない。現に海外からの留学生は入国できないでいる。

「9月入学」を考える前に学校の正常な再開に取り組んでほしいというのが大方の意見だろう。 

齋藤泉

齋藤泉(TBS科学担当解説委員)

経産省、文科省、外務省など10の省庁を担当。先端技術、ロボット、次世代エネルギー、情報通信など取材。東日本大震災後は福島第一原発の廃炉の現場取材を継続。趣味はジャズと映画鑑賞。合気道二段。