NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月28日

同時検証「コロナ禍」の日々(34)「検察定年延長政局」【その1】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 「緊急事態」を延長した5月4日の安倍総理会見。延長の謝罪の一方で、なんとも少ないPCR検査をめぐって記者の質問に安倍総理はイラ立ちを見せたっけ。しかし、この後、政局は急展開を告げることになる。「自粛生活」の中で、黒川東京検事長の定年延長をめぐる「官邸主導」の展開は、爆発的な反発を呼び、政局に突入することになったのだ。

 5月11日の朝、衆議院の予算委員会の部屋はまだ静かだった。コロナ対策で、議員席は3人掛けの両端2人分だけとなり、横幅をとったあおりで、端の記者席は2列となっていた。その最前列に陣取っていると8時50分に大臣一番乗りの麻生財務大臣が入ってきて、大臣席に座ると秘書官から渡された資料を所在なげに見始めた。

 そして、秘書官を従えた安倍総理が紺のスーツに紺のネクタイ姿で登場した。安倍総理は席に着くと傍らにあった水筒の蓋を開けて何やら中の液体をのんだ。「緊急事態宣言」ではあるものの、どこかのどかな空気が流れていた。今だからわかる、この先に約1か月後に起きる「激震」は、これから質問に臨む立憲民主党の枝野代表でさえ想像していなかったはずだ。

 手元の朝日新聞(5月11日朝刊社会面)は「国会で審議が始まった検察庁法改正案への抗議が、ネット上で急速に広がっている。政府の判断で検察幹部の定年を延長できる規定が『人事や捜査への政治介入を招く』と問題視され、ツイッター上では9日夜から10日朝にかけて『#検察庁法改正案に抗議します』という投稿が相次いだ。コロナ禍が続くなか成立を急ぐ姿勢にも反発が出て、リツイートも含め、その数は10日夜までに470万件を超えた」と伝えていた。

 さらに、読んでいくと「歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん、音楽グループ『いきものがかり』の水野良樹さん、俳優の秋元才加さん、芸人の大久保佳代子さんも同様に、ハッシュタグ付きで抗議の意思を示した。『政治の話はしないけど、これは黙っておけない』『国民が感染症で苦しんでいるのに』といった投稿も目立った」という。

 この後の経緯の記述は、今振り返っても簡にして要を得ている。社会部記者が書いたと思われるが、妙に感心したりした。それによると「安倍内閣は1月、政権に近いとされる黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を閣議決定し、検事総長になれる道を開いた。国家公務員法の延長規定を適用したとし、過去の政府答弁との矛盾を指摘されると、法解釈を変えたと説明。その上で改正案を提出した。野党側は森雅子法相が出席した形での審議を求めたが、与党は応じないまま8日に強行する形で委員会審議が始まった。早ければ13日にも採決される可能性がある」とあった。

 改正案は、法務省官房長などを務め、「官邸の番人」とまで呼ばれる黒川検事長(この時)の定年延長を「後付け」するとともに、検察幹部の「出口」での「官邸の関与」は、検察庁への官邸のにらみを利かせる「効果」が見込まれるものだったのだ。そして、今日は、立憲民主党の枝野代表が間もなく質問に立つというわけだ。昨日の夜、委員会審議の前日、急遽、「黒川検事長定年延期問題」が、野党の最初の質問者である立憲民主党の質問項目に加わったとメールがあったのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞