NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月27日

同時検証「コロナ禍」の日々(33)緊急事態宣言延長会見「PCR」で怒

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 4月7日の1か月をめどとした「緊急事態宣言」の発出以来、国民の「自粛生活」にも関わらず、安倍総理は5月4日に行われた記者会見で「更に新規感染者を減らしていく必要があります。医療現場のひっ迫した状況を改善するには1か月程度の期間が必要であると判断しました」と、延長を宣言することになったわけだ。

 当然、質問に立った記者は安倍総理が見つめる中、「今回、宣言を延長し、国民が自粛継続など更なる負担を強いられることについて、率直に政治の責任においてどのようにお考えになりますでしょうか」などと責任問題を質した。これに安倍総理は、両手を差し出しながら「当初予定をしておりました緊急事態宣言について、1か月で終息する、終えるということを目指しておりましたが、残念ながら1か月延長するに至ったこと、内閣総理大臣として責任を痛感しております。それを実現できなかったことについて改めて、おわびを申し上げたいと思います」と、この日の記者会見で2回目の謝罪をした。

 ただ、「責任がある」と比較的簡単に認めながらも、「責任をとる」とは言わないのが「安倍流」なのだ。すぐさま、「その上で、この5月は、現在の流行を終息させること。そして、次なる流行に備える、その1か月であると、その備えを万全に固めていくための1か月であると考えています。私自身、その目標に向かって、目的に向かって先頭に立って努力をしていく考えであります」と左手を差し出して力を込めて見せた。

 さすがに、「低姿勢」が続いた「延長会見」だったが、最後の記者の質問で安倍総理の様子は一変することとなったっけ。その記者は、これまでも、そしてその日の会見でも安倍総理がPCR検査の体制強化を繰り返していることを踏まえ、「日本はOECD(経済協力開発機構)の加盟国の中で1,000人当たりのPCR検査がメキシコに次いで低いというような数字も出ていて、日本は非常にPCR検査が少ないということは国際的にも分かってしまっている」と質問を始めた。そして、畳みかけるように「PCR検査は感染状況を知る上でも、あるいは自分が感染していることを知らないで人にうつしてしまうケースがあるという意味でも非常に重要だと思うので伺うのですが」と前置きをして、「ということは、総理、日本は内閣総理大臣がPCR検査が今、少ないので増やせということを指示をしても、今の日本は実力的にPCR検査を増やすことができないのだということを総理はおっしゃっているのでしょうか」と質した。そして、「それとも、そこまで、まだ、これまでは本気で増やすことをしてこなかった…」と付け加えた。前に座って聞いている安倍総理はその様子ををじっと見つめて右手で耳を掻いたりした。

 安倍総理を前に、その記者の質問は止まらず、「例えばPCR検査のことを国会で聞かれても、まだ1万件も行っていないのに、今、1万5,000あるのをキャパシティーを2万に増やすというようなお答えをされる。でも、まだ1万件いったこともない。つまり、どこか他人事のようなお答えをされるけれども、それは、それほどまだ本気で増やそうとこれまでしていなかったということなのか、それとも、実際に本気で増やそうとしたのに本当に増えなかったのか」と語り、安倍総理はいらだった様子で今度は右目の下を掻いた。

 そして、いらだった様子のまま安倍総理は「これはもちろん本気でやる気がなかったというわけでは全くありません。私は何回も、とにかく能力を上げていくと。実際、能力は上がってきているわけであります」と左手を記者の方に差し出して語気強く語った。そして、「国としてできることは、予算をつけて能力を上げるということでありまして、1万5,000…」と今度は両手を腰にあて、その後「しかし、1万5,000、能力を上げたら、では1万5,000人分行くかといったら残念ながらそうなっていないのでありますが…」と、両手を広げて声を張り上げた。

 そして、「多く見て、多くは東京に集中をしているわけであります。ですから、先ほど申し上げましたように、PCRセンターを20か所増やす中、東京に集中的に12か所増やしました。医師会にも御協力を頂く。言わばそういう体制をつくっても…」と両手を広げて早口で語り続けた。そして、一気に「なぜかと言えば、これはまず、それをPCRをやる方を、ぬぐわなければいけなかったわけでありますが、それをやる、言わば人的な目詰まりもあったわけでありまして、医師会の皆さんにも御協力を頂き、また、歯科医師会の皆さんにも御協力を頂くことになったわけでありまして、そういう意味において、全力を挙げていきたいと思っています」と語り、力を込めた。

 ただ皮肉なことに、強く語れば語るほど、記者の質問の言い方をすれば「本気で増やそうとしたのに本当に増えなかった」ということを印象付ける格好だった。そして、その後、「緊急事態宣言」を全面解除した今でも、このPCR検査は思ったように増えなかったというわけなのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞