NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月26日

同時検証「コロナ禍」の日々(32)「緊急事態宣言延長」

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 4月7日の「緊急事態宣言」、12日の星野源さんにあわせた自宅でくつろぐ動画の投稿、公明党の山口那津男代表の安倍総理への「一律10万円給付」の安倍総理への直談判、16日の「緊急事態宣言の全国拡大」、17日の10万円給付への転換を「混乱を招いた」と謝罪した会見、警鐘として自宅療養中の埼玉県の50代男性の死亡、23日の俳優の岡江久美子さんの死去、月例経済報告の景気判断が「急速に悪化」に、24日臨時休校中の幼稚園、小中学校、高校などは全体の9割に、26日に8月の全国高校総合体育大会の夏季大会が中止決定、5月2日に国内感染者の死亡500人超え…。暗いニュースばかりが続いた。

 そして、4日、安倍総理は「緊急事態宣言」の最初の区切りである6日を控えて、4日、記者会見に臨んだというわけだ。紺のスーツに水色のネクタイ姿だった。会見場に入ってくるときに着けていた、こだわりの「小さな布マスク」をとると、安倍総理は「緊急事態宣言を発出してから間もなく1か月となります。最低でも7割、極力8割、人との接触を削減する。この目標の下、可能な限り御自宅で過ごしていただくなど、国民の皆様には大変な御協力を頂きました。その結果、一時は1日当たり700名近くまで増加をした全国の感染者数は、足下では200名程度、3分の1まで減少しました。これは、私たちが終息に向けた道を着実に前進していることを意味します。また、一人の感染者がどれぐらいの数の人にうつすかを示す実効再生産数の値も、直近の値も1を下回っています」とプロンプターを左右に見ながらゆっくりと語り成果を強調した。

 続けて、「緊急事態を宣言した4月上旬、1か月後の未来について、欧米のような感染爆発が起こるのではないか。そうした悲観的な予想もありました。しかし、国民の皆さんの行動は、私たちの未来を確実に変えつつあります。我が国では、緊急事態を宣言しても、欧米のような罰則を伴う強制的な外出規制などはできません。それでも、感染の拡大を回避し、減少へと転じさせることができました。これは、国民の皆様お一人お一人が強い意志を持って、可能な限りの努力を重ねてくださった、その成果であります。協力してくださった全ての国民の皆様に心から感謝申し上げます」と両手を胸の前に開いて語った。

 そして、「その一方で、こうした努力をもうしばらくの間、続けていかなければならないことを皆さんに率直にお伝えしなければなりません。現時点ではまだ感染者の減少が十分なレベルとは言えない。全国で1万人近い方々がいまだ入院などにより療養中です。この1か月で人工呼吸器による治療を受ける方は3倍に増えました。こうした重症患者は回復までに長い期間を要することも踏まえれば、医療現場の皆さんが過酷な状況に置かれている現実に変わりはありません。これまでに500名を超える方々が感染症によりお亡くなりになられました。心から御冥福をお祈り申し上げます」と口を真一文字に閉じた。

 その後、安倍総理は「一人でも多くの命を救うためには、医療資源を更に重症者治療に集中していく必要があります。1日当たりの新規感染者をもっと減らさなければなりません。このところ、全国で毎日100人を超える方々が退院など、快復しておられますが、その水準を下回るレベルまで、更に新規感染者を減らしていく必要があります」。「医療現場のひっ迫した状況を改善するためには、1か月程度の期間が必要であると判断いたしました」と左手を指し出したりしながらの身振りを交えて語り、最後には両手を胸の前で結びながら差し出した。

 続けて、眉間にしわを寄せた安倍総理は「当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたいと思います」と力を込め、頭を下げた。「感染症の影響が長引く中で、我が国の雇用の7割を支える中小・小規模事業者の皆さんが、現在、休業などによって売上げがゼロになるような、これまでになく厳しい経営環境に置かれている。その苦しみは痛いほど分かっています。こうした中で、緊急事態を更に1か月続ける判断をしなければならなかったことは、断腸の思いです」と語りかけ、口を真一文字に閉じた。

 なんとも出口は見えなかったのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞