NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月23日

同時検証「コロナ禍」の日々(30)「緊急事態全国拡大」と「一律現金給付」【その2】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 「緊急事態宣言」を全国に拡大したことを受けた4月17日の総理記者会見。安倍総理は「大型連休に先立ち、それぞれの地域で観光施設への休業要請も必要となるでしょう。人の流れを、人の流入を防ぐため、各地域が所要の緊急事態措置を講じることができるよう、今般、緊急事態宣言の対象を全国に拡大することとしました」などと力を込めたっけ。

 そして、安倍総理は「全国が一体となるために」「日本全体が一丸となってこのウイルスとの闘いを闘い抜いていく」「何よりも、国民の皆様との一体感が大切です」と力を込めた後、「国民の皆様と共に乗り越えていく。その思いで、全国全ての国民の皆様を対象に、一律に1人当たり10万円の給付を行うことを決断いたしました」と、会見場で正面からその様子を映しているテレビカメラに向かって語りかけるように話した。

 しかし、そもそもは「所得が大きく減った世帯」への「制限付き30万円の現金給付」で閣議決定までして、自民党の二階幹事長の発言をきっかけに公明党の「連立離脱」までほのめかすという抵抗で「一律10万円の現金給付」に転換したのだ。

 安倍総理は「収入が著しく減少し厳しい状況にある御家庭に限って、1世帯当たり30万円を給付する措置を予定しておりましたが、国民の皆様から寄せられた様々な声、与野党の皆様の声も踏まえまして、更に給付対象を拡大することといたしました」などと、手ぶりを交えて理由を説明した。

 そして、「これに伴って、現金給付の総額も、これまでの6兆円から14兆円を上回る規模へと大幅に拡大することとなります。補正予算の編成をやり直すこととなるため、更に1週間程度の時間を要することとなりますが、速やかな国会成立に向けて御協力をお願いしたいと思います」と付け加えて軽く頭を下げた。

 続けて「ここに至ったプロセスにおいて混乱を招いてしまったことについては、私自身の責任であり、国民の皆様に心からおわびを申し上げたいと思います」と、今度は深く頭を下げた。

 「日々、事態が大きく推移する中で、国民の皆さんの健康と暮らしを何よりも最優先に、そして、国民の皆さんの声にしっかりと耳を傾けながら、常にベストな判断をするよう、最善を尽くしていく。その責任をこれからも果たしていく決意であります。一日も早く、現金を皆さんのお手元に届けられるように、実施に当たる自治体や関係機関の方々と協力し、政府を挙げて全力で取り組んでまいります」と両手を胸の前で広げてみせるのだ。

 「リーマンショックのとき、全国民一律に配付した定額給付金の際には、皆さんに案内をお送りする作業だけで3か月もの時間を要しました。そのため、今回はスピードを重視するとともに、申請する人が殺到して感染リスクが高まることを避ける観点から、手続については市町村の窓口ではなく、郵送やオンラインによることにしたいと考えています」と両手を胸の前で振り下ろしたりした。この時、素直に「速やかに」10万円が届くことに期待してしまった自分が、今となってはなんとも恥ずかしい。

 「マイナンバー」を使った給付は手続きの不足で区役所に人が殺到し、長時間の「三密状態」を引き起こしているのだ。そして、給付を心待ちにしている足立区在住の私の手元には郵送の現金給付の「申請用紙」すら届いていないのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞