NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月21日

同時検証「コロナ禍」の日々(28)騒然予算委「マスク」めぐり【その3】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 新型コロナの感染拡大対策を盛り込んだ補正予算の国会提出を受けて開いた4月28日の衆議院の予算委員会。自民党の岸田政調会長がトップバッターで立ち、「緊急事態宣言」の下で、ある種厳粛な雰囲気で始まったこの日の審議だった。しかし、終盤に質問に立った立憲民主党の大串博志議員の「布マスク」をめぐる質問への安倍総理の答弁をめぐって委員会室は荒れた。「布マスク」の配給は「経済官庁出身の官邸官僚」が「全国民に布マスクを配れば不安はぱっと消えますから」などと発案し、配給が決まったなどとの報道(朝日新聞4月3日朝刊)があったのを踏まえ、大串氏は「決定の経緯」を質した。しかし、このことは、安倍総理の「琴線」に触れたようだった。

 ヤジが飛ぶ委員会室で、安倍総理はメモを見ながら長々と、「海外の例」まで引いて説明し、しびれを切らした大串氏は途中、質問席で立ち上がり止めるよう叫び、これに安倍総理は逆に「質問者が立たれて答弁を遮られては、やりとりにはならない」と語気を強めて切り返した。

 これには、大串氏は「時間稼ぎはやめてください。私はなぜ4月1日になぜ1億枚を配ろうと思ったかその時の判断経緯を聞いている。それを延々ね、全然関係ないこと言われて。いつものことだが。これは総理、今、普通のとき。国難のとき…」と話すと今度は、与党席の方から「だからなに」と大声が上がり、大串氏はそのヤジに「何をやじっているのかあ、私に。私もきちんと話している」と声を荒げて反発し、委員長が「与党も、野党も、閣僚席もご静粛に」と困った表情を見せた。

 その中、大串氏は「国難の時だから、国民の皆さんはやはりリーダーとして総理が何するか真剣に見ている。466億円のマスクを使ってマスクを配ることが本当に良いのか」と力を込めた。そして「466億円のお金があれば私たちの学費や生活費の支援をしてほしいと思っている子供たちがいるからあ…」と大声を上げると、野党席から大きく拍手があがった。大串氏は「なぜそういう判断ができないか聞きたいから聞いている。経緯も含めてぜひ真摯に答弁をしてほしい」と語った。

 これに安倍総理は「大串委員、だから私は先程説明したじゃないですか」と苛立たし気に切り返した。「そういう予算をかけるんですからどういう事情があるのかということを真剣に私は答弁させていただいたつもりですよ。その最中に立ち上がってですね、答弁を邪魔されたんでは、冷静なやりとりにならないんじゃないですか」と憤然とした表情で大声をあげた。

 そして、「その中においてでは他国がどうであったかという例も引用させていただきました。当然ではないですか。そういう状況をしっかりとまじめに私は答弁させていただいているんですよ。それをあまりにもですね。私が例えば時間稼ぎなんかする必要なんかないじゃないですか。ちゃんとですね、ちゃんと説明をさせていただきたいとこのように思います」と語気を強めた。これで、また野党からのヤジが飛び、これに「応戦」する与党からのヤジも飛んで委員会室は騒然とし、委員長は困った表情で「与野党ともにご静粛に」と叫んだ。

 一呼吸おいて安倍総理は話し始め、「いわば評価するような話をするとですね、ヤジで遮られたり邪魔をされるわけでございますが、それも含めてですね、どういう評価を得ているかということについて話をすると直に妨害されるのは誠に遺憾ではないかこう思うわけでございます。そこで…」と左手を胸の前に置いたり、身振りを交えて語った。ヤジが巻き起こる中、委員長は「まず答弁をきちんと聞いてください。総理お願いします」と促し、安倍総理は「そこでですね前回残念ながら、黄ばみがあるものが出たということでございまして、検品を今しっかりとさせているところでございます」と語った。

 安倍総理は「どこから出荷したかということも含めてそれをもう一度ですね、検品等の見直しを行っているわけでございましてそういうものを行った上においてですね、できるだけ早くお手元にお届けをしたいとこう考えているところでございまして、今検品等をしっかりとやっている最中でございまして。今、直ちにですね、いつまでに、お配りができるということについてはですね、これを今ここでお答えするには至っていないところでございますが、できるだけ早くですね、点検を強化し、そしてお届けをしたいと、このように考えているところでございます」と力を込めた。

 4月1日に総理官邸で開いた第25回新型コロナウイルス対策本部での安倍総理の表明に始まったこの「安倍のマスク騒動」。衆議院予算委員会で「できるだけ早く」と繰り返す姿は、今(5月18日)となっては痛々しい。まだ、東京・足立区に住む私の元には、その「布マスク」はまだなおも届いていないのだ。すでに、駅前のレンタルDVD屋さんには普通に売り出されていて、そして思うのだ。「もういらない」。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞