NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月20日

同時検証「コロナ禍」の日々(27)騒然予算委「マスク」めぐり【その2】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 新型コロナの感染拡大対策を盛り込んだ補正予算の国会提出を受けて開いた衆議院の予算委員会。終盤に質問に立った立憲民主党の大串博志議員の「布マスク」をめぐる質問への安倍総理の答弁をめぐって委員会室は荒れた。「布マスク」の配給は「経済官庁出身の官邸官僚」が「全国民に布マスクを配れば不安はぱっと消えますから」などと発案し、配給が決まったなどとの報道(朝日新聞4月3日朝刊)があったのを踏まえ、大串氏は「決定の経緯」を質した。

 これに、安倍総理はメモを見ながら長々と説明を始めたのだった。途中、たまりかねた大串氏が質問席で立ちあがってやめるよう叫んでも、安倍総理の「説明」は続いた。

 安倍総理は、「これも『経緯』の1つでありますから聞いていただきたいと思いますが」と前置きし、「感染拡大防止に一定の効果があると考えておりまして、米国のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)もですね、使用を推奨する旨の発表を行った他ですね、シンガポール、フランスのパリ、タイバンコクなどで市民に配布する動きが広がっていると承知をしております」と、「外国の例」まで引いて手元に置いたメモを見ながらの説明を続け、大串氏は「経緯のとこだけだから」「経緯のとこだけですから」と繰り返し大声をあげて止め、委員会室はヤジにつつまれた。

 それでも安倍総理は「また、洗濯することで繰り返しできるため皆さまに洗濯のご負担をおかけするが…」と続け、これに大串氏は「時間をとるようなことやめてくださいよ」と叫んだ。続けて、安倍総理は「急増しているマスク事業の…観点からも有効と…」と話し、大串氏は「時間を稼ぐことやめてくださいよ」とまたもや叫んだりした。

 野党からのヤジが大きくなる中、委員長は「ちょっとお静かに」と繰り返し呼びかけた。その中、安倍総理は、「いま答弁中でございますから…。しばらくの辛抱…」と、説明を続け、野党席からは「答弁じゃねえじゃねえかあ」と大声があがったりして、委員会室の中は騒然とした。委員長が「恐縮です。もう少し聞いてから委員長の方で判断しますから」と段々、「懇願調」になっていった。

 一旦、周りを見回した安倍総理は「それでは委員長にしたがって答弁させていただきますが…」と、またメモを読み始め「また急増しているマスク事業の抑制の観点からも有効と考えているわけでございまして、先日マスク増産に取り組んでおられるユニ・チャームの高原社長からも今般配布される布マスクとの併用が進むことで全体として現在のマスク需要の…」と、今度は「社長のコメント」を紹介し始めた。大串氏が「そんなことねえ。決めた経緯を聞いてるんだからあ」「経緯を聞いているんだからあ」と大声を上げても、安倍総理は「…凌げるのではないかとの話もあったところでございまして…」と説明を続けようとして、ヤジがさらに大きくなると「ちょっと私が答弁している最中でございますから」と、憤然とした表情を見せた。

 委員長は「いま結論が出ますから」と、さらなる「懇願調」でヤジに静かにするよう求めた。ここで、安倍総理は姿勢ををただし、周りを見回した。そして、「経緯ということをおっしゃっているわけですから、どうしてそういう判断をしたかということであれば、どういう受給の状況だったのかということについてあるいはその有効性について説明するのは当然のことではないでしょうかっ。当然のことをご説明している中においてですね、質問者の方が立たれてその答弁を遮られては、これはやりとりにはならないのではないかということは、申し上げておきたいと思います」と語気強く反発して見せ、質問1つへの約5分間にもわたる「答弁」をまとめた。

 新型コロナの感染が拡大し、「緊急事態宣言」が出ている下での眼前の様子に、「やれやれ」と思った。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞