NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月19日

同時検証「コロナ禍」の日々(26)騒然予算委「マスク」めぐり【その1】

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 そして、新型コロナの感染拡大対策を盛り込んだ補正予算案の国会提出を受けて開いた4月28日の衆議院の予算委員会で、質問に立った立憲民主党の大串博志議員は「まずはマスクの問題でございます」と話しだした。「今日、安倍総理が提言し、全戸配布されているこのマスク着けてきました」と、手で触ってみせると、野党席から「いらない、いらない」とのヤジが飛んだ。そして、大串氏が「さすがにちょっと小さいなという感じがしますし、横も空くなあという感じがします」と言うと、今度は「給食当番だよ、給食当番」と声が上がったりした。その中、前に座ってメモを眺めていた安倍総理は、メモを横に置いて大串氏をにらみ「本気モード」に入ったようだった。

 大串氏は「布マスク」の納入業者の選定の説明が不自然だとする質問などを続け、途中で、自らつけていた「布マスク」を「総理のマスクは空気を吸うのが難しく、替えさせていただきます」と付け替えたりした。そして、「安倍総理にお尋ねする。4月1日にこのマスクを国民1世帯あたり2枚配布すると突然言われた。これはどういう背景で言われたのか。マスコミ報道によると総理官邸の経産省官僚から、『このマスクを配れば国民の皆さんの不安は、ぱっと解消しますよ』と言われて決断されたということも書かれていた。どうやってこれは決断されたか」と声を張り上げた。

 これに、安倍総理は「最初この布マスクしていただいたんですが、途中から息苦しいということで外されましたが、私ずっとしているんですが、全然息苦しくはございません。意図的にそうやって貶めるような発言はやめていただきたいと本当に思います」と語気を強め、委員会室はざわついた。

 その後は、手元のメモを見ながら「マスクについては2月以降設備投資補助などにより大幅増産に取り組んできましたが、機械設備の輸入や原料確保などの制約もあり、急激な事業の拡大に追いついておらず、残念ながら店頭での品薄状況が長引いているというのが現状でもあろうと思います。こうした中で、マスクが手に入らず不安に感じておられる皆さんもおられると認識を致しまして、これまで医療機関へのサージカルマスクの優先的な配布に加えまして、介護施設や小中学校などに感染拡大防止の観点から布マスクの配布を行ってきました」と長々話すので、野党席から苛立たし気に「経緯だけでいいっ」と大声が上がったりした。

 その後も、安倍総理はすました顔で「その上でマスクが手に入らず、困っておられる方がいらっしゃるとの認識のもとですね、国民の皆さまに幅広く布マスクの配布を行うこととしたところでございます。先ほど申し上げましたように、小中学校あるいは介護施設等々に送らせていただきましたが、息苦しいとかそういう苦情は今のところ聞いてはいないということは申し上げておきたいと思います」と説明を続けるので委員会室は騒然とし、耐えかねた大串氏は質問席で立ち上がって「時間取るのやめてくださいっ」と叫んだ。

 それでも、安倍総理は「布マスクはですね、咳などによる飛沫の飛散…」と続け、大串氏が「経緯だけですからいいです」と叫んでも「いやこれ大切なところですから。飛沫の飛散を防ぐ…」と手元に置いたメモを読み、野党席からのヤジで委員会室が騒然とする中、委員長が「ちょっとお聞きください。まずお待ちください。どうかご静粛にお聞きください」と制したりした。

 4月7日に「緊急事態宣言」が出された後、先の見えない「自粛生活」を余儀なくされる中で、国会の眼前で繰り広げられているのは、1世帯2ずつ配られる「マスク」をめぐる混乱だった。「やれやれ」と思った。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞