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TBS NEWS

2020年5月17日

同時検証「コロナ禍」の日々(25)少ないPCR検査「2か月前」と…

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 新型コロナの感染拡大を受けた4月28日の衆議院での予算委員会で昼前に野党のトップバッターで同僚議員の拍手の中質問にマスク姿で立った立憲民主党の枝野代表は「第2次世界大戦終結後、最も深刻な危機の中に、今、私たちの社会はあると考えています」と語りだした。

 前に座る安倍総理は足を組み、手を腹の前で結んでそんな枝野氏の姿を眺めていた。この時、気づいたのだが見たところ「小さな布マスク」は安倍総理と、後ろに控える総理秘書官しかつけていないのだ。国会議員にはすでに配布されているはずなのだが、自民党も含めてそれ以外の議員はみな町で売っている紙製のマスク姿などだった。「やっぱり人気ないんだなあ」と思ったりした。

 そして、枝野氏は「さて命を守るためのスタートラインと言えるPCR検査でございます。2か月前、2月25日のこの場で、予算委員会で件数をお尋ねしました。1日3830件の能力があるとのことでした。昨日の本会議の答弁でも1日1万5000件以上あるとの答えでしたが、実際の検査件数は8000件程度であります。能力と実際のギャップが大きすぎる状況は2か月前と変わっていませんっ」と声を張り上げた。

 続けて枝野氏は「条件が厳しすぎるのではないか」とし、『以下のような場合には帰国者・接触者相談センターに相談ください』、とあって、37.5度以上が4日以上続くとの項目があります。岡江久美子さんは4月3日に発熱し、3日後の6日に容体が急変、検査はその後だと伝えられています。志村けんさんは倦怠感を覚え、2日後に入院して肺炎と診断され、陽性が判明したのはさらに3日後だと伝えられています。この37.5度以上、4日以上継続との基準は変えるべきだったのではないですか」と質した。

 これに、加藤厚生労働大臣は「通常の風邪と比べて新型コロナの特徴を踏まえて、37.5度以上が4日続くならむしろ必ず受診してほしい、こういう目安として出させていただいた。ただその目安が逆の意味で使われているというご指摘もいただいたわけであります。改めてその状況を踏まえて柔軟に判断していくよう通知も出させていただいているところです」と淡々と答えた。

 これに収まらない様子の枝野氏は「基準そのものを変えるという明確な姿勢を出さないと、やはり最近でもだるいんだと、熱があるんだ、でもまだ4日経っていないからまだ後ですよと、こういう話が聞こえてきているのは現実なんです」と声を張り上げた。

 そして「実際に、いや、岡江久美子さんや志村けんさんがもし数日早かったら命が救われていたかどうか、これは分かりません。しかしながら、命を守るために最善を尽くすという観点から能力がなくて、検査ができない、それは能力の問題として増やさなきゃなりませんが、少なくとも余力があると、能力がもっとあるんだということは2ヶ月前も昨日もおっしゃっている状況の中にあります。私たちは3月3日には既に新型コロナウイルス検査拡充法案を提出していますが、政府・与党は、審議にすら応じずに2カ月が経とうとしています。総理は責任感じませんかっ」と安倍総理をにらんで声を強めた。

 ここで、安倍総理が答弁に立ち、「PCRの対応につきましてはですね、能力をえー、上げていっているところでありますが、現在は1万5000、そしてこれを2万まで能力を上げていきたいとこう考えております。その中におきまして医師が必要とする判断、PCR検査を必要があると判断した方、患者の方については、PCR検査が受けられるようにしていかなければならないとこのように考えております」と、淡々と答えた。

 これに枝野氏は「2か月前からおっしゃってることの繰り返しなんですよ」と声を荒げ、野党席から「そうだあ」とのヤジが飛んだ。そして、枝野氏が「余力があるんだったら基準を変えたらいい。なぜ変えられないのか」と力を込め、野党席からまた「そうだあ」との大声が上がった。

 その後も加藤厚労大臣の答弁に納得がいかない野党席からのヤジで委員会室は騒然とし、枝野氏も憤然とした表情で「2か月の間、状況も変わってきているんです。2か月という時間があったんです。にもかかわらず今、こういう状況になっている」と声を張り上げた。

 そして、今に至るまでPCR検査はなかなか増えず、少なさが諸外国に比べて際立つ状況は変わっていないというわけだ。「検査の目安」から「37.5度以上」との体温の目安を削除することさえ、この日から10日経った5月8日だった。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞