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TBS NEWS

2020年5月10日

同時検証「コロナ禍」の日々(20)「休業要請」小池都知事vs西村大臣

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 4月7日、安倍総理が夜7時からの記者会見に臨み、「もはや時間の猶予はない」「事態は切迫しています」とし、「緊急事態宣言を発出することとします」と力を込めてから約1時間後、早くも「調整不足」が浮き彫りになることになった。

 「緊急事態宣言」に基づいて都道府県知事が業者らに出す「休業要請」をめぐり、いきなりここで、国と小池都知事の対立が表面化したのだ。

 この日の午後8時から記者会見に臨んだ小池都知事は、「外出の自粛要請を行います。区域は東京都内全域、期間は先ほど申し上げたように5月6日まで」と力を込めた後、「緊急事態措置の一環としてお示ししております施設の使用制限などでございますけれども、現在は対象施設について国との間で調整を行っているところでございます。引き続き、この具体的な内容につきましては、国との調整を行って、都といたしましては、現状を鑑みますと、できるだけ早く明確にしていきたい」と悔しさをにじませながら付け加えた。

 そもそも小池都知事は国の「緊急事態宣言」の後、すみやかに「休業要請」を出そうと準備を進めていた。そして、その範囲について「密閉、密集、密接の3密」が起きるリスクをなくすという観点から想定。すでに、具体的な業種名が並んだ資料も報道されたりした。

 しかし、「小池案」にはホームセンターや理髪店、屋外の運動施設なども含まれていた。国は経済への影響から対象が広すぎると考え、西村経済再生大臣との間で調整がつかなかったのだ。

 小池氏は「やはり、一つひとつ、お店の方、業界の方、どうやって、この間、生きていこうか、本当に必死でございます。従業員がいる、家賃が必要だ、色々ございます。それらのこともしっかりと、とらえながら、一方で、この感染症がそのままだらだらと、引き続き広がりを見せたり、続いていくことは、結果として、みんなを弱くしていくということでございます」と強調した。

 そして、「都としまして、むしろ、ご協力いただける店舗等についての、それにはしっかりとお応えすることで、先ほどから大目的という言葉を何度も使っておりますけれども、感染症拡大の防止をしなければ、皆様のこれまでの生活は取り戻せない、そして、これまでのお仕事が続けられないということでございます」と、会見の最後まで悔しさを隠せない様子だった。

 国の方は、入れ替わるように夜8時50分から西村大臣は記者会見に臨んだ。

 紺のスーツ姿の西村氏は記者から小池都知事との「休業要請」の調整について尋ねられると「措置が取られる場合の対象施設の考え方は対処方針の最後のページに安定的な生活を継続、維持していくために継続を求められる事業について、継続を求められる事業者としてのリストが挙げられています。例えば4番のところで食堂、レストラン、ホームセンター、それから6の生活必需サービスのところで銭湯、ランドリーとならんで理美容店と明記されております。安定的な生活のをしていくために、維持のために必要な事業と位置づけています」と、すでに「決定事項」だとして切り捨てて見せた。

 そして、西村大臣は東京都の対象事業者の報道について「小池都知事というか、東京都としては様々な案でいろいろ報道されています。おそらく、様々な紙が出ていたんじゃないかと想像しているんですが、いろんな考えを整理をされていたのだと思います。私どもとの調整が終わる前に紙が出ていたのでないかと想像するんですが、それが報道につながったのではないかと思います」と、小池都知事側が「既成事実」を作ろうとしたのではないかとの警戒感からか、不快な表情を見せた。

 この後、すったもんだの末に「休業要請先」から理髪店などを除外して決着したのは10日になってからだった。

 この日の昼に記者会見に臨んだ小池都知事は「都は、これまでも前もって準備をしておりました。それぞれの施設、カテゴリーを列挙しまして、そして、これまでの政令にならった、そういう整理をしていたということであります。ただ、この協議をする、途中から国と協議をし、というのが入ってきて、基本的な対処方針の中へ出てきて・・・」ともはや悔しさを隠さなかった。そして、「権限はもともと代表取締役社長かなと思っていたら天の声がいろいろと聞こえまして、中間管理職になった感じではありますけれど・・・」と混乱の3日間を振り返った。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞