NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月8日

同時検証「コロナ禍」の日々(18)「緊急事態宣言」発出

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 「まず冒頭、全国各地の医師、看護師、看護助手、病院スタッフの皆さん、そしてクラスター対策に携わる保健所や専門家臨床検査技師の皆さんに日本国民を代表して心より感謝申し上げます。新型コロナウイルスとの戦いのまさに最前線で強い責任感をもって、今この瞬間も一人でも多くの命を救うため、献身的な努力をしてくださっていることに心からの敬意を表したいと思います」――。

 新型インフルエンザ特措法を改正した翌日(3月14日)の記者会見では「万が一」としていた「緊急事態宣言」に、4月7日のこの日、安倍総理は「重い腰」をあげた。3月20日、21日、22日の「緩んだ3連休」の感染の潜伏期間を過ぎる2週間後に当たる4月3日、4日、5日は感染者が増え続け、事態は緊急を要することとなったのだ。

 総理会見は感染防止のために内閣記者会所属の会社は各社1人とフリーの代表者らなどと限定された。場所も記者の間隔を広く確保するためにいつもの会見室から大広間に変え、妙にがらんとしたところで、安倍総理は、夜7時に、小さな布マスク着けて登場し、そのマスクを取ると冒頭、医療従事者に感謝と敬意を表した。

 そして、安倍総理は「感染リスクと背中合わせの厳しい状況をも恐れず、ベストを尽くしてくださってる皆さんを支えるため、出来ることは全てやっていきたい。医療現場を守るため、あらゆる手を尽くします」と両手を胸の前に上げ、力を込めた。その後、左右のプロンプターを見ながら「ただ、こうした努力を重ねても、東京や大阪などの都市部を中心に感染者が急増しており、病床数は明らかに限界に近づいています。医療従事者の皆さんの肉体的精神的な負担も大きくなっており、医療現場はまさに危機的な状況です」と語った。そして、「現状ではまだ全国的かつ急速的な蔓延には至っていないとしても、医療提供体制がひっ迫している地域が生じていることを踏まえれば、もはや時間の猶予はないとの結論に至りました」と、一旦、口を真一文字に結び、その後「この状況は国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがあると判断いたしました。特別措置法32条に基づき、『緊急事態宣言』を発出することといたします」と力を込め、真正面を見た。広い会見場にカメラのシャッター音が盛んに鳴り響いた。

 この後、安倍総理の表情はさらに厳しくなり、「事態は切迫しています。東京都では感染者の累計が1000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります」と、ゆっくりと説き聞かせた。

 ただ、その後、「接触機会の削減目標」を掲げるとともに「1か月限定」と口にするのだ。安倍総理は「しかし、専門家の試算では私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することが出来れば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることが出来ます」と口を真一文字に結んだ。そして、「そうすれば爆発的な感染者の増加を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性も出てくると考えます」と目標の理由を説明したうえで、「その効果を見極める期間も含め、GWが終わる5月6日までの1か月に限定して、7割から8割削減を目指し、外出自粛をお願いいたします」と、左手の人差し指を立てながら力を込めるのだ。

 1か月我慢すれば、「解除」されると思ったあの日は今、振り返るとつらい。「目標が達成できなかったから」と言われればそれまでだが、一生懸命、泊り番や取材などの必要がある日以外は、テレワークの日々で「自粛」したものの、1か月後、ここにきてあっさりと「緊急事態宣言」がさらに「1か月」延長されてしまったのだから。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞