NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月6日

同時検証「コロナ禍」の日々(16)「コロナ3点セット」の2つ目は

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 「アベノマスク」に次ぐ、痛恨の一打が「星野源さんとの“コラボ”」だ。今、改めて見ると、4月12日の日曜日の昼にツイッターで見た時の「あちゃー」との思いがよみがえる。画像の半分のギターを抱えた星野さんの「うちで踊ろう」との歌声に合わせ、右半分で白いシャツとパンツのラフな姿の安倍総理が黒い犬を抱いて愛でてみせて“コラボ”は始まる。東京・富谷の自宅だと言われる白いトーンの部屋で、薄いグリーンの高級そうなソファ、脇のこじゃれたランプ、壁にかかった絵と相まって「上級国民」感一杯なのだ。星野さんの「生きて踊ろう 僕らそれぞれの場所で」などとの歌声の中、ソファにくつろいで座った安倍総理は、本を読んでみたり、カップで何やらのんでみたり、テレビのリモコンを操作したり、していた。

 当然、「出口」が見えない中、感染と将来への不安を抱えながら「自粛暮らし」を余儀なくされている人たちに一気に反発は広がり、ツイッターは「炎上」することになったわけだ。政界でも、共産党の小池書記局長が月曜日の記者会見で「もう救いようのないずれ方だと思います。ツイッターをせっかくやるなら、やっぱり仕事ができない、お金が入らない、生きていけないということがね、悲痛な叫びとしてあるわけだから、そこに応えるメッセージを送るのが総理の仕事だ」とし、「こういうときに犬と戯れお茶を飲んでいるという姿を示すっていうことは、危機感のかけらもない姿をさらしていることにもなるし、こんなふうに過ごせる国民がどれだけいるかということも考えればね、こういう発信は普通はしないんではないか」と声を張り上げた。そして、批判や疑問の声は野党内だけでなく与党内にも広がることになったっけ。

 この中、感染予防のために、いつもの記者会見場ではなく総理官邸大ホールに場所を移して、東京や大阪など7都府県「緊急事態宣言」から10日を過ぎての記者会見に小さな布マスクをして登場し、臨むことになる。そこで、記者からは「この間の会見でも一斉休校について感染者の拡大を防げなかったと、いうふうに述べられました。最近では、布マスクや星野源さんの動画でも批判を浴びているのですが、この間の一連の新型コロナの対応について、ご自身でどのように評価されていますでしょうか」などと水を向けられるのだ。

 これに安倍総理は、「一斉休校」や「布マスク」の説明の後に、眉間にしわを寄せながら「若い皆さんのですね、この今、感染が増えている中で若い方々がですね、この移動することによって感染が拡大すると、若い皆さんに、どのようにその、なるべく自宅で外出を自粛していただくかという声を伝える取り組みということで様々な工夫をさせていただきました」と手ぶりを交え言葉を選びながら語った。続けて「もちろん様々な批判があったということは受け止めておりますが、賛否両論あったんだろうとこう思います」と苦情の表情を見せ、「専門家の皆様のご協力、ご助言もいただきながら、やるべきことは今まで全てやってきたつもりでございます。もちろん至らない点はあったとは思いますが、これからも全力を尽くして努力をしていきたいと、こう思っております」と力をこめたのだった。

 しかし、この「星野源さんとの“コラボ”」はその後も批判はやまず、今や「アベノマスク」に次ぐ「コロナ3点セット」の2つめ(3つめは、後に起きるなんとも格好の悪い「制限付き30万円給付策の撤回」なのだが)にランクインすることになってしまっているのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞