NEWSの深層

TBS NEWS

2020年5月1日

同時検証「コロナ禍」の日々(13)「小中高校再開指示」…

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 安倍総理は新型コロナの感染拡大を受けた2回にわたる記者会見の後、東京では桜がまんかいの「3月の3連休」の前に、今にして思えばなんとも「残念」な行動に出ることになる。「第21回新型コロナウイルス感染症対策本部」でのあいさつでは、まず、「大規模イベントの自粛」「学校の休校」「時差出勤への協力」などをあげ、それまでの取り組みに「効果があったとされている」と強調したうえで、今後の取り組みにも「全力を挙げて取り組む」とした。

 ちなみに、「その日」の感染者数がわかるという、2週間後の4月3日の深夜12時現在の感染者数を見ると3850人だ。一方、この日の厚労省発表は昼の12時現在950人で、この人数をもとに話しているとみられるが(ちなみに朝日新聞調べでは深夜12時現在で1727人)このずれからくる「甘いトーン」が後から振り返るとつらいのだ。

 そして、安倍総理は、「3密」を避けるよう呼びかけたのに続けて「その上で、これまで政府の要請を受けて臨時休校に取り組んでいただいた学校については、今回の専門家会議の分析提言を踏まえて、新学期迎える学校の再開に向けて具体的な方針をできる限り早急に文部科学省において取りまとめてください」と力を込めてしまうのだった。

 感染拡大後2回目の総理記者会見(特措法改正翌日の3月14日)で語った、「センバツ高校野球」ができなくなった高校球児への思い、そして、「卒業式」をやってほしいとの思い。それをわざわざ強調して口にしたところを見ると、「小中高校の一斉休校」は、自ら「決断」したものの、その後の反応には思うところがあったのだろう。

 会議の後、萩生田文部科学大臣は、記者に囲まれて、マイクを向けられる。

 萩生田大臣は「先ほどの対策本部において、総理からは新学期を迎える学校の再開にむけた具体的な方針をできる限り早急に文部科学省においてとりまとめてほしいとの発言がありました。長期の休校により子ども達の学習の遅れやストレス増大などの声も聞いております」とし、「私としては子ども達に心身共に健康で充実した毎日を取り戻すためにも、昨日の専門家会議の分析、提言を踏まえ地域の実情に応じて新学期からの学校を再開する場合の準備を進めて参りたいと考えております。具体的には新学期からの学校再開に向けた考え方および留意事項をとりまとめたガイドラインを来週の早いうちに公表したいと思います」と語った。そして、記者から「いま出されている全国一斉の休校要請の取り扱いは?」と水を向けられると、「あの、すでに高校・中学学では春休みに入っております。来週から全国で小学校が春休みに入りますので、政府として要請した春休み前までの『一斉休業』については延長しないということを確認しました」と明言してみせるのだ。

 3月14日の総理記者会見での「公園に行こう」「卒業式をやろう」との趣旨の呼びかけ、それに加えての「小中高校の再開」指示。PCR検査が少なく、しかも2週間後にわかるという「その日の感染者数」の状況を知らない中で、国民の「自粛疲れ」に響く「明るいメッセージ」だったのだろう。そして、東京では桜が咲き満ちる中、20、21、22日の「痛恨の3月の3連休」に突入していくことになる。

 一方、「小中高校」についてはこの後、24日に文部科学省が「学校再開」に向けた「指針」を公表した。しかし、その後に都市部を中心に感染者が増加、4月1日になって対策本部の後、萩生田大臣が「感染者が増加傾向にあったり、今後ある地域で爆発的患者急増が懸念される場合は、新学期に一定地域での臨時休校を実施する可能性も視野に入れていただきたい」と語る、「指針の見直し」に追い込まれたのだっけ。そして、「緊急事態宣言」下の今に至る「休校」という、まさしく「猫の目」のような展開となったのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞