2020年5月1日
[ TBS科学担当解説委員 齋藤泉 ]
100年に一度の緊急危機と言われる「リーマンショック」を受けて世界は市場に大量の公的資金を流す異例の金融緩和政策をとった。その出口戦略を見いださなければならない時に起きた新型コロナウイルスの感染拡大。世界だけでなく日本の景気の先行きと金融政策の行方がますます不透明になった。
きのう新型コロナ緊急経済対策の補正予算が成立した。その額は25兆6914億円で補正予算としては過去最大。政府は当初検討した「一世帯あたり30万円の給付」(4兆206億円)を取り下げ、いったん閣議決定した補正予算案を組み替える異例の措置をとり、「1人一律10万円の給付」の経費として8兆8857億円多い12兆8803億円が計上された。しかし、財源がないことから新規の国債発行に頼らざるを得ない状況。
今年度の新規国債発行は当初は32兆6000億円だったが、58兆2000億円と過去最大規模になり、いわゆる赤字国債がどんどん増え続ける見通し。今年度末時点での国債の発行残高は1033兆円に増加する見通し。1000兆円を超えるのは初めて。このツケは国民に回ってくることになる。
マイナス金利政策を続ける日銀としては手詰まり感の中、さらなる異例の措置に踏み込んだ。
いまいちばんの問題は企業の資金が足りなくなることで、企業の「資金繰り」支援が最優先という考え方。つまり日銀はこれまで以上に国や企業の債務=借金の後ろ盾になるということ。
「こんな事になる前に、ちょっとでも緩和を締めておけばよかった。景気は良かったのだから」という声も出ている。アメリカの中央銀行にあたるFRBもゼロ金利政策に戻り始めるなど世界も同じ方向に向かっている。このままだと異次元緩和という状態は今度も続きそう。言ってみれば、新型コロナの感染にいつ終息宣言が出るのかが見えないのと同じ状況になっている。
齋藤泉(TBS科学担当解説委員)
経産省、文科省、外務省など10の省庁を担当。先端技術、ロボット、次世代エネルギー、情報通信など取材。東日本大震災後は福島第一原発の廃炉の現場取材を継続。趣味はジャズと映画鑑賞。合気道二段。