NEWSの深層

TBS NEWS

2020年4月29日

同時検証「コロナ禍」の日々(12)痛恨の「第21回新型コロナ対策本部」

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 そして、安倍総理は新型コロナの感染拡大を受けた2回にわたる記者会見の後、「3月の3連休」の前に、今にして思えばなんとも「残念」な行動に出ることになる。「第21回新型コロナウイルス感染症対策本部」でのあいさつは、つらい。

 菅官房長官や加藤厚労大臣ら全閣僚が集まった横長のテーブルの中央に座った安倍総理は、手をテーブルの上で組み、手元の原稿を見ながら「昨日、専門家会議が開催され、国内の感染状況やこれまで講じてきた感染拡大防止の取り組みの効果について、専門家の方々から分析をいただき、あわせて提言をいただきました」と語りだす。そして「まず、国内の感染状況については、爆発的な感染拡大には進んでおらず」とここで力を込め、顔を上げるとスチールカメラのシャッター音が部屋の中にけたたましく響き、「引き続き持ちこたえているものの、都市部を中心に感染者が少しずつ増えているなど、一部の地域で感染拡大がみられるとの分析がありました」と続けた。

 その後、「一方、北海道においては、緊急事態宣言を契機とした道民の方々のいち早い取り組みにより、感染者の急激な増加を避けることができており」とここで改めて顔を上げ、「北海道以外の地域においても、大規模イベント等の自粛や学校の休校、時差出勤へのご協力など、その内訳までは分からない部分はあるものの、国民の皆様の一連の適切な行動により、新規感染者数の若干の減少がみられ、効果があったとされています」と力を込めた。会議の冒頭のあいさつの頭どりなので、記者やカメラマンは大勢いるものの、質問はできない「一方通行」だ。

 ちなみに、「その日」の感染者数がわかるという、2週間後の4月3日の深夜12時現在の感染者数を見ると朝日新聞調べで3850人だ。この日の厚労省発表は昼の12時現在950人で、この人数をもとに話しているとみられるが(ちなみに朝日新聞調べでは深夜12時現在で1727人)、このずれが後からみるとつらいのだ。

 安倍総理は、語る。「その上で、今後の見通しとしては、これまでの努力を続けなければ、クラスターの大規模化や感染の連鎖、さらには全国のどこかの地域で患者の急激な増加、いわゆるオーバーシュートが生じる可能性が指摘されています」。そして、「こうした専門家の見解を踏まえ、政府としては、感染の連鎖を断ち切るためのクラスター対策の抜本的な強化、感染者の急増に備え、重症者への医療に重点を置く医療提供体制の整備に全力をあげて取り組んで参ります」と強調した。ここまではいいのだが…。その後は「国民の皆様におかれましては、換気が悪く、多くの人が密集し、近距離での会話や発声が行われるという3つの条件が同時に重なるような場を避ける行動を引き続きお願いいたします」と続けてしまう。

 今では、「同時」ではなくどれか一つでも避けなければならないのだ。そして、この直後に「痛恨」の一言が出るのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞