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TBS NEWS

2020年4月24日

同時検証「コロナ禍」の日々(9)「公園に行こう」「卒業式をしよう」で…

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 そして、今となって悔やまれることなのだが、足元では約2週間後にわかる感染者数が1499人(3月28日正午現在、厚生労働省発表)にも上っている中で、3月14日の安倍総理の記者会見での「前向き」なメッセージは続く。

 安倍総理は「スポーツジムやライブハウスなど、特定の場所では集団での感染が確認された事例が報告されています。その共通点は、第1に換気の悪い密閉空間であったこと。第2に人が密集していたこと。そして第3に、近距離での会話や発声が行われたこと。この3つの条件が同時に重なった場合です。この3つの条件が重なる場所は感染リスクが高い。そのことに最大限の警戒をしていただきたい。自らの身を守る行動を取っていただくよう、改めてお願いいたします」と力を込めた。後に、「密閉」「密集」「密接」の「3密」と、今に至るまで感染拡大防止のキャッチフレーズとなった、わかりやすい説明だった。

 しかし、この後、またもや「甘いメッセージ」を送ってしまうのだ。ここで、安倍総理は「3密」を裏からとらえて見せ、「言い換えれば、これら3つの条件が同時に重なるような場を避ける、もしくは、できるだけ同時に重ならないように対策を講じることで、感染のリスクを下げることが可能です」と力を込めるのだ。あたかも「3密」の重なる「積集合」でなければいいかの言いぶりなのだが、今では「1密」でも避けなければならない状況に追い込まれてしまっているのだ。

 そして、安倍総理の「前向き」なメッセージは続く。「この2週間、学校が休校となり、一日のほとんどを自宅で過ごしてきた児童生徒の皆さんも多いかもしれません。しかし、健康管理、ストレス解消のためにも、人が密集しないようにするなど、安全な環境の下、屋外に出て運動の機会も作ってください」と促すのだ。これはどうだろうか。

 今になれば、休校中の子供のストレス解消や、テレワークで過ごす人達の気分転換のためにその公園は、ジョギングや運動をする人らが集まる「駒沢オリンピック公園」をはじめ大小の公園が「混雑」する事態となった。新型コレラウイルスについて話し合う政府の専門家会議も4月22日に尾身副座長が会見で「今後は注意して利用していただかないといけない」と指摘し、提言では「10のポイント」の1つとして「ジョギングは少人数で」「公園はすいた時間、場所を選ぶ」などと、わざわざ盛り込まれることとなったわけだ。今朝の新聞は「小池百合子知事は25日から大型連休最終日までの12日間を『ステイホーム(家にいようよ)週間』と位置付けた」「来園者の密集状態が懸念されていた都立82公園は、利用自粛を要請した上で駐車場や遊具施設を閉鎖する」(4月22日 読売新聞朝刊)と報じていた。

 さらに、記者会見での安倍総理の「前向き」なメッセージは続く。「今後、予定されている卒業式についても、安全面での工夫を行った上で、是非、実施していただきたいと考えています。参列できない保護者のために、オンラインで参加できるようにする。参列者のいない式を教員の皆さんが楽器演奏で盛り上げる。子供たちの一生に一度の門出を祝うため、各地の教育現場において厳しい制約条件の中で、本当に様々な工夫が行われていることに感謝申し上げます」。

 そして、「卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます」と力を込め、「最後の思い出を作る、この大切な時期に学校を休みとしたことは、大変申し訳なく思っています。皆さんが先生や友達と育んできた絆(きずな)は、決して色あせることはありません。そうした絆を大切にしながら、これからもそれぞれの道で大いに活躍されることを願っています」と語った。

 卒業式をさせてあげたいとの気持ちも痛いほどわかる。しかし、「公園に行こう」「卒業式をしよう」との趣旨の「総理の明るいメッセージ」として、「出口の見えない自粛疲れ」の国民に響いたのだろう。これが1週間後に控える「緊張の緩んだ3連休」の「痛恨の事態」の呼び水になってしまっていないだろうか。「緊急事態宣言」の下の暮らしをしながら今、振り返ると、そう思えてくる。そして、この後、安倍総理はさらに深みにはまっていくのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞