NEWSの深層

TBS NEWS

2020年4月22日

同時検証「コロナ禍」の日々(7)「少ない検査」をもとに

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 そして、新型コロナウイルスを新型インフルエンザ特別措置法の対象に加える改正が3月13日に成立し、これを受け翌14日安倍総理は感染拡大をめぐる2度目の記者会見に臨んだのだっけ。「1、2週間の瀬戸際」を理由に、小中高校の一斉休業を要請してから2週間ほどたったタイミングでもあった。あの日の記者会見を今、見直すと取材していた自分をも含めて深い反省の思いになった。

 会見場に現れた安倍総理は目の前の透明なプロンプターを左右に見ながら、「新型コロナウイルス感染症に関する特別措置法の改正案が昨日、成立いたしました。これにより、今後、万が一、緊急事態に至ったと判断した場合、この法律に基づいて、蔓延の防止と社会機能の維持のため、様々な措置を取ることが可能となります」と話し始めた。

 そして、「もとより、そうした事態にならないよう、国民の皆様に大変な御苦労と御不便をお願いしながら、政府と自治体が一体となって懸命に感染拡大防止策を講じております。その上で、あくまで万が一のための備えをする。そのための法律であります。様々な私権を制限することとなる緊急事態の判断に当たっては、専門家の御意見も伺いながら、慎重な判断を行っていく考えであります」と原稿を読み上げた。

 そうだったのか、あの時は「『万が一のための備え』と考えていたのか」と、結局『宣言』のもとの日々を送っている身としては、なにやら遠い昔のようにも思えた。記者席も、会見場いっぱいにパイプ椅子の席がいっぱいに並んで記者がパソコンに会見を打ち込んでいて、まさに「密」であるのだ。これが、わずか1か月まえの様子なのだった。

 安倍総理は「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です。WHO(世界保健機関)が今週、パンデミックを宣言しましたが、人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっており、韓国、中国のほか、イタリアを始め、欧州では13か国、イランなど中東3か国よりも少ないレベルに抑えることができています」と力を込めた。そして「こうした状況を踏まえれば、現時点で緊急事態を宣言する状況ではないと判断しています」と胸を張って記者席の方をにらんで見せた。「ただし、事態は時々刻々変化しています。高い緊張感を持って事態の推移を注視し、国民の命と健康を守るため、必要であれば、手続にのっとって法律上の措置を実行する考えであります」と付け加えたのだが。しかし、今となっては、この「自慢」を誰が納得するであろうかと思った。

 おりしも手元の新聞は「感染の有無を確認するPCR検査の対象は保健所などの窓口が必要と判断した人に限っていた。背景には、当初、日本の検査能力が不十分だったことがある。感染者用の病床も限られていたため、広く検査の網をかけて陽性者が増えれば、感染症者らで病院があふれる事態が懸念されていた」(読売新聞4月22日朝刊社説)と振り返っていた。検査数が少なければ感染者数が少ないのは当たり前だったのだ。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞