NEWSの深層

TBS NEWS

2020年4月20日

同時検証「コロナ禍」の日々(5)「1、2週間が瀬戸際」と

[ TBS政治担当解説委員 石塚博久 ]

 コロナの感染拡大を受けた2月29日の安倍総理の記者会見で、幹事社にはじまった記者からの質問は、詳しい説明もなく全国一斉の小中高休校表明に至ったことだった。

 これに、安倍総理は「今回の要請に伴い子供にとって学年の最後、卒業前、進学前の大切な時期に学校を休みとするその決断を行わなければならないというのは本当に断腸の思いであります」と語った。そして「 学校において子供たちの集団感染という事態はなんとしても防がなければならない、そうした思いで決断をしたところであります。今、専門家の皆様もあと1から2週間という判断をされた。いわば判断に時間をかけている暇はなかったわけでございます」と力を込めた。

 脇ににすわる菅氏は疲れた表情のまま記者席の方に目をやり、一方、壁脇の今井氏は胸を張っているように見えたっけ。のちに、「一斉休校」の決断を後押ししたのは、今井首相補佐官による進言で、安倍政権の危機管理をになってきた菅官房長官はわきに置かれたとの報道があったことで、この時の様子は合点がいくことになったのだが。

●「記者会見の終わりは…」

 そしていくつかの質問の後、司会者の長谷川内閣広報官が「えー、予定しておりました時間を経過いたしましたので…」と言いかけると、左脇の近くに座っていたジャーナリストの江川紹子氏が「まだ質問があります」と声を張り上げた。これに、長谷川広報官は「以上をもちまして記者会見を終わらせていただきます。皆様ご協力どうもありがとうございました」語り、安倍総理もすました表情で一礼した。それでも江川氏は「まだ質問あります」と声を上げ、たが長谷川広報官は「それでもあの、ちょっと予定した時間大分過ぎておりますので、今回はこれで。どうもありがとうございました」と切り上げようとし、記者会見場には、江川氏の「最初の質問にちゃんと答えられていませんっ」との声が響いた。なおも長谷川広報官は「あの、そういう予定でだいぶ超過しておりますので」とし、36分間にわたる記者会見は終わった。確かに、全国小中高の休校の理由について語られたのは専門者会議が24日に発表した、「あと1、2週間が瀬戸際」とのことだけだった。

●のちに菅官房長官は…

 そういえば、後に菅官房長官がこの小中高校の一斉休校について国会で語っていたことを思い立ち、議事録で改めて確認してみた。

 3月5日の参議院予算委員会だった。野党の質問に答えて菅官房長官は「北海道が全校休暇したい、あるいは大阪も一斉休校したい、そうした話、私どもも承知していまして、総理との間で、まだ発生していない部分をどうするかと、これいろんな議論をしました。そして私は、『最終的にはこれは総理のご判断ですよ』ということも申し上げました。ですから、午前中のときには、午前中会見したように地域でやってくれればいいじゃないかという話をしていたんですけれども、ずっと総理と4、5日前、4、5日間これ議論をしまして、総理御自身がその日に午後から御判断をされたということを私は聞いたということであります」。とあった。

 いつもになく詳しく決定過程を明かし、そしてなんとも突き放した言い回しだった。「よっぽど思うところがあったんだろうな」と思った。

石塚博久

石塚博久(TBS政治担当解説委員)

1986年、日本経済新聞社入社。大阪本社証券部、名古屋支社(愛知県警、名古屋市役所担当)を経て、90年から東京本社政治部。官邸クラブ(海部政権)、野党クラブ(社会党土井委員長、田辺委員長)、平河クラブ(自民党竹下派担当、92年竹下派分裂など)等を担当。
1996年TBS入社。政治部で新進党クラブ、平河クラブ(自民党橋本派担当)、外務省(田中真紀子外務大臣)等を担当。その後「筑紫哲也NEWS23」ディレクター、デスクを経て、「時事放談」を制作プロデューサーとして立ち上げ。現在、TBS報道局政治担当解説委員。
著作:「官僚」(共著)新聞協会賞受賞