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TBS NEWS

2020年3月9日

今週の注目「ジャック・ウェルチ氏死去」

[ TBS報道局編集主幹 播摩卓士 ]

 「20世紀で最も卓越した経営者」と称されたアメリカの経営者が亡くなりました。

 アメリカのGE・ゼネラル・エレクトリック社の会長を務めたジャック・ウェルチ氏が1日、腎不全のため死去しました。84歳でした。ウェルチ氏は1981年に45歳の若さでGEの会長兼CEOに就任、「世界で1位か2位の事業しかやらない」との方針のもと、大胆な「選択と集中」を進め、CEO在任中の20年間に、GEの売上を5倍に、株価を30倍に伸ばし、「20世紀最高の経営者」とまで称されました。「中性子爆弾」にも例えられるほどの過激なリストラに加え、M&Aによる積極的なグローバル化や、NBCテレビの買収や金融業への進出といった多角化にも取り組み、グローバル複合企業体の原型を作り上げました。しかし、引退後のリーマンショックで稼ぎ頭だった金融事業が会社の経営危機を招く事態となり、GEは未だその痛手から完全には立ち直れていません。

 ジャック・ウェルチ氏は、80年代90年代、とりわけバブル崩壊後に苦しんだ日本の企業社会では、『神様』のようにあがめられた存在で、経済界の会合やパーティーのあいさつでは常にその発言が引用され、本屋ではビジネスマンがこぞってウェルチ本に手を伸ばすといった状態でした。グローバル化と株主資本主義という特徴に代表される「20世紀のアメリカ資本主義」の全盛を、まさに体現した経営者と言えるでしょう。確かに「選択と集中」という言葉は、今もその輝きを失ってはいません。

 しかし、金融事業への過度な依存や、退任後に明らかになった会社の資金の私的流用ぶりなどは、その経営スタイルが21世紀には、必ずしも通用しなくなったことを示しています。「21世紀の資本主義」のあり方をウェルチ氏に問うのは、もちろん酷なことです。それでも、社会主義を標榜する候補者を大統領にしたいと思うアメリカの若者がこれほどいる現実を、一体どのように感じているのか、ウェルチ氏に聞いてみたいと思うのは、私だけでしょうか。

(BS-TBS「Bizスクエア」 3月8日放送)
播摩卓士

播摩卓士(TBS報道局編集主幹)

1984年入社 報道局で経済全般、日米関係、国際政治などを取材。夕方のニュース番組やNEWS23編集長、経済部長、ワシントン支局長、NEWS23キャスターなどを経て、現在、BS-TBS「Bizスクエア(日曜午後9時)」キャスター。