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TBS NEWS

2020年1月24日

【WEB特集】今年度かぎり“見敵必撮”偵察航空隊に密着(9)編集後記+追記:西日本豪雨写真

[ 報道局編集部 水口康成 ]

 「事」の始まりは、宮城県の松島基地でのことだった。バリバリという音を立てて急上昇する機体を見て「あ、ファントム、音がでかいな」と声を上げたところ、横にいた方が「あれはRF、百里から来ていますよ」と語りかけてくれたことだった。偶然隣り合わせになったご家族で、母親は大きなレンズを付けたカメラでバシバシ写真をとり、父親はブルーインパルスの模型を手にしたお子さんと一緒に飛行機が飛び交う空を眺めていた。さらに説明を続けてくれた。(↓松島基地にて)

 「あれは偵察機です。もうすぐ引退するそうです。」と。偵察という言葉はあまりに遠く、引退と言われても、古い機体だから当然だろう、とそのときは気に留めなかった。

 ところが、この家族のすすめでSNSをフォローしていたある日、偵察航空隊が被災地の撮影をした、との書き込みを見かけた。小さな画像もアップされていた。(↑上の写真は取材時に撮影したものでアップされたものとは違います)ほとんど聞くことも見ることもなかった偵察航空隊。情報収集という言葉には様々な議論があるが、今回の取材で見た数々の写真は、この隊が災害支援の一翼を担っている事を物語っていた。なぜか、我々メディアも、災害時の「早期の段階での情報収集は簡単ではない」ことを痛感しているからだ。こうした映像は取材・撮影できるのか、機体は、隊は…そこから基地広報そして偵察航空隊広報との接触を始めた。

 時期的には百里基地航空祭の準備で忙しい11月下旬、さらに、通常の訓練や任務もある中、基地・偵察航空隊の協力で、取材が実現した。ところが撮影中に気象状況が一気に変わって霧に包まれたり、インタビューでは私達の想定にはなかった飛行隊長のマネージメントも踏まえた話、まさかと思うような東日本大震災、原発事故当時の話…時間は全く足りなくなった。

 偵察機RF、そして偵察航空隊の廃止後、「世代交代」で災害にどの様な関わり方が始まるのだろうか。期待は必然と大きくなる。その一方、偵察・情報収集のあり方や意味についてはどうか、現場は。第501飛行隊の話を聞いて、「行ってくれるか」と言われれば、「異議を唱えず高い志」を示し、戻ってくれば「任務ですから」とさらりと言ってしまう。偵察航空隊には「飛行機好き」だけでは務まらない何かがある、そんな集団だった。

 「RFは百里」その言葉から始まった今回の取材、百里基地、偵察航空隊、そして紹介してくれた御家族…多くの皆さんに感謝します。


 後日談:こんな偶然もありました。偵察航空隊が公開してくれた西日本豪雨の被災地の航空写真の中に岡山県真備町の小田川決壊現場が映し出されていました。時間的には差がありますが、偶然私もそこに居ました。地上では、川の水が家屋の脇の土砂を削っていったような印象でしたが、航空写真では、一気に流れ出していった様子が映し出されていました。

 上の二枚は偵察航空隊が撮影した現場です。画面中央の決壊現場は以下の写真の通りで、ブルーシートが見える左手が家屋の被災現場です。私が現場に入ったのは、すでに復旧工事が始まっている段階でした。

 土砂に埋まったと言うよりは、周りの土砂が流されて沈んだ印象でした。

 俯瞰画像の有無で把握できる情報に決定的な差が生じる事がわかります。偵察航空隊の写真は自治体からの要請を受けた上級部隊よりの要求に応える形のもので、隊自体が進んで公開するものでもありません。ですが、こうした成果をもっと公開してはどうか、とつい思ってしまうのです…)

(偵察航空隊取材記:終わり)

水口康成

水口康成(報道局編集部)

外信部、NEWS23、サンデーモーニングなど担当。
元従軍記者で、著書は「旧ユーゴ内戦の記録'91-'96」や「ボスニア戦記」など、このほか通信社や新聞社などに寄稿。
趣味:テラリウム
好きな食べ物:カイマックと蜂蜜を塗ったパン